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青と白と緑と

 また、飛行機が空を飛んでいる。

 すごく、高いところを飛んでいる。あの飛行機も大陸に行くのかな。

 安寿は学校への道を歩きながら、空を飛んでいる飛行機を見えなくなるまでぼうっと眺めていた。

 今日の天気は一日晴れでしょう。雲がかかる地域もありますが、雨の心配はありません。春の陽気を感じられるでしょう。

 寝ぼけなまこの雅を布団から引っ張りだし、雅の開かない口にパンをねじ込みながら見た天気予報で、気象予報士のお姉さんが言っていた。

 外は気持ちのよい春の陽気で、気持ちが良い。

 両手をうんと左右に伸ばして春の空気をいっぱい吸った。暖かい空気の中にほんのりと若草色の匂いが混ざっている。

「ねえまーくん。すごくいい天気だね。」

 笑顔で雅のほうを向くと、雅は重いまぶたをわずかにこじ開け、ただ道の先を見つめていた。

「ん。」

「ねえもっと目開けてさ。山の方も見てみてよ。すごい綺麗な雲だよ。」

 安寿が元来た道の方を指す。左右に広がる草木を引き裂く狭い灰色の道。そのずっと進んだ先の、小さな山の上には大きな入道雲が浮かんでいる。露草色の空と、純白の雲と、萌葱色の山。鮮やかな風景が広がっていた。

 雅が足を止め、のろのろと振り返って雲を見つめる。安寿も足を止め、嬉しそうに振り返る。

 冬の澄んだ風が二人の髪を揺らし、周りの草木が擦れ合う。電線の揺れる音も車の音も人の声もしない中、安寿のランドセルについているキーホルダーの鈴だけが、自然に混ざって小さくチリリと鳴る。

 長い長い時間が経ったように感じた。いつの間にか風は止み、鈴の音も聞こえなくなった。

「行こうか。」

 雅が山の、自分たちの家がある方向に目をやりながら言った。二人の家はここからでは見えない。

「うん。」

 安寿はくるりと回り、雅はのたのたと方向転換をした。安寿が雅の手をにぎり、学校へ歩き出した。

 二人の後ろでは、また、飛行機が空を飛んでいる。


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