学校の怪談5
「お姉ちゃんに買ってもらったの?よかったわねえ。」
レジのおばちゃんがのんきにそんなことを言うから、隣で和希がご機嫌にえへへなんて言って照れている。
夜の学校に忍び込んだのが昨日。ポテトスナックを買わされたのが今日。帰ってきてからの早く買ってよコールはすごかった。お母さんにばれるんじゃないかとひやひやした。
「ありがとー。」
ポテトスナック10袋をレジ袋に入れてもらうと、一言叫んで自動ドアの外へかけていく。せめて5袋くらいと思ったのに、当然のようにわしづかみで棚にあるだけをかごに突っ込んできた。ぼくの少ないおこずかいはこれで143円になってしまった。むむむむ。
「いただきまー。」
帰り道。我慢ができなくなった和希がさっそく一袋目を開けだした。
「歩きながら食べちゃだめでしょ。」
日ごろお母さんに言われているではないか。
「でもこれ家で食べてるの見られたら、まずくない?」
和希がぼりぼりと何を言っているのかというような表情でこちらを見てくる。
「ポテトスナック10個も持ってて怪しまれるより、今食べたほうがいーじゃん。」
なかなか正しいことを言っているような気がする。でもなんかむかつく!
「なにをぬかすかー。」
ぐわしぐわしぐわしと和希の頭をぐちゃぐちゃにする。
「んでさ。今日学校探検してどうだったの?」
ぐわしぐわしから抜け出した和希が実にうまい質問をしてきた。これは答えなくてはいけないではないか。
「特に何も。そろそろでてきたっていいのにね。」
「見つけたら教えてね。」
「和希も探してよ。」
めんどー。叫んで走って行ってしまった。前よりまた足速くなっているような気がする。
今日も学校のあちこちを探しているのに、何も見つかる気配がない。もう探していないところなんてないような気がする。校舎内も、校庭も。
「やっぱり夜なのかなあ。」
昨日の夜は雰囲気が確かにあった。校庭を出るときにも、何かいたような気がする。
でも。夜はちょっと怖かった。
「んー!!どうしよう。」
一人で背伸びをしながら考える。また行こうか、どうしようか。
あの怖さを知って、また夜の学校に入れるかな。
「お金もないしなあ。」
残りのお小遣いは143円。二度目を頼むとなると額は多少値上げをしなくてはいけない気がする。
「もー!」
頭の中がイライラしてきたので家までの数十メートルを走った。和希はとっくに家の中に入っている。
家の前まで残り2メートル。やっぱり自分の足はそんなに速くない。
「わっ!」
和希が物陰から飛び出してきた。声も出ずに前に転んだ。左ひざがじんじんする。見ると少しすりむいていた。
あはははは。和希が笑いながら家に入っていく。
お姉ちゃんをバカにしおって!
家の戸を開けて力の限り叫ぶ。
「ポテトスナック没収!」