二月二十七日、午前六時五十七分
「ねえ起きて、まー君起きてよ。」
藤村安寿は布団から意地でも出てこない広岡雅を起こそうと必死だ。
「学校遅れちゃうよ。ねえー。」
「んあー。」
雅が呻く。
「んもう!」
安寿は苛立って布団に枕をぶつける。雅からぬふうと声が漏れた。
先ご飯食べちゃうからねと言い残して安寿は部屋を出た。
安寿が怒りながらリビングに行く。皿が2枚。その上に食パンが1枚ずつ。椅子に座りテレビの電源を入れパンにかぶりつく。テレビは大陸との戦争の映像を映し出した。アナウンサーが昨日起こった陸戦について語っている。センキョウは引き続き良好。順調にセンリョウチイキを増やしている。昨夜の戦闘では一気に街を3つセンリョウしカイシンゲキを続けている。
何を言ってるかさっぱりわからない。まー君なら分かるんだろうな。
安寿は理解を諦めて他のチャンネルに回すがどこも戦争一色。テレビを消した。
時計を見ると7時12分。そろそろ出ないと。
赤の色褪せたランドセルを背負って再び寝室へ。歩きながら5年1組の文字がだいぶ薄れてしまった名札をつける。寝室の戸を開けると雅はまだ寝ていた。安寿ははあと溜息をついた後、もう一度枕を投げつけた。
布団からはぬふうと声が漏れた。