私はもう以前の世界で一番お姫様ではないんです
如月玲那5歳、家族の愛情をたくさん浴びながらすくすくと健康に育ちました。ゆるふわな自然にカールを巻いている色素の薄い髪をお気に入りのヘアゴムでツインテールに結い上げ、どこぞの童話から飛び出してきたんじゃないかという可愛らしいふりふりのドレスをきた美幼女は誰かって?
あたしだよ!
……はい、すいません調子のりました。許して。
やーしかしマジないわー、なんだ今回の親御様、前世の両親より親バカレベルがぱねぇっすわ。やっぱ科学が発達してるからなのか。3歳になったとき1回如月財閥のビルにいったんですがね、社内の至る所に私がいるんですよ。
え、意味が分からない?巨大パネルになった私の写真がめっちゃ張り出されてんの!
しかもちょっとパパのお仕事してるとこ見てみたーいって気軽にいったらすぐに会社見学に連れていかれまして、社内にはいったら重役勢揃いして「いらしゃいませ玲那お嬢様」ってずらーっといるの。一般職員までずらーっとよ。仕事大丈夫なのかしら。めっちゃ電話のコール音してるのに誰一人職場に戻らないんですよ。
でね、副社長?あと秘書課のトップの人がね私に色紙わたしてサインしてくださいって言うんですよ。してやりましたよ。ひらがなで「きさらぎれな」ってな。気分はハリウッド女優でした。
写真も撮られまくってフラッシュの嵐でした。パパの仕事姿見に来たのに見たのは自分の写真にまみれた社内っていうなんともコメントしづらい結果。いや、でも始終笑顔で対応した私偉いと思います。
とにかく両親の溺愛うざい。お兄ちゃんも私にはすごく優しいけれど、適度に私にかまったら残りの時間を難しい本を読むことに費やしている。この間入ったお兄ちゃんの部屋に六法全書があったのには自分の目を疑った。
あんたまだ7歳でしょ。
そんなもの読めないでしょ。
お兄ちゃんは何を目指しているのでしょうか。
両親もお兄ちゃんも私に甘い。甘すぎる。ゲロ甘だ。もし普通の子がこの立場で甘やかされて育っていたならとんでもない我がままで世界は自分を中心に回っていると勘違いした子になっていただろう。まさにワールドイズマインだ。だが私は流されない!受け身の体制でいるというころがいかに危険かを知っているからだ。どんな甘い誘い文句にも乗らないぜ。
勉強しなくていい、危ないから外にでるな、好きなものを好きなだけ食べて、欲しいものはなんでも買ってやるだと!ふざけるな!
勉強は詰め込めるだけ知識を詰め込んだ。以前は苦手だった英語も身に着けるため身近に英語を話せる人に英語で話しかけ通用するか確かめた。
外にも積極的に出ていろんな経験をした。いろんな土地にいき、いろんな人と話し話題には事欠かなくなった。護身術を習うため過去何人もオリンピック選手などを育成している道場に通い詰めた。
お肉、デザート大好きだけれど心を鬼にして野菜と魚中心の食事を心がけた。
欲しいものなんてとくにないのに過分に与えられるお小遣いを施設団体に毎月寄付してやった。
誰かにそうしろと言われたわけじゃない。自分が腑抜けた人間にならないように、流れに身を任せるんじゃない、自分が流れを操れるような人間になれるように自分を律しながら生活し、外面は完璧な令嬢に仕上がった頃、私に婚約者の話が持ち上がった。
え、なにそれいらねー。
(私はもう以前の世界で一番お姫様ではないんです)