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覚えておけ!

ほぼ会話文の会長視点

◇◇◇



 ゲーム終了後の生徒会





 朱雀門焔は苛立たしげに生徒会室の会長席へ座り込んだ。


 これまで朱雀門家の御曹司として育てられ、常に人の上に立ち、すべてが自分の思うがままに事が進んできた。周囲が自分の言うことを聞くのは当たり前。自分に逆らうやつは容赦なく消し去る。それが朱雀門焔の日常であった。


「クソ! 何故俺様があんな下等種にこんな屈辱を味あわせなければならないんだ!!」


 あまりにすべてが望み通りで退屈いていたもの事実。少しくらい予想外の出来事があるのは新鮮で面白いと思った。しかし、だからといって自分よりも明らかに人としての格が違う下等な存在にしてやられるというのはプライドが許さなかった。



「まあ、落ち着きなよ会長ぉ」


 焔に続き香城繭理が生徒会室へ姿を現す。


「落ち着いてられるか、何なんだあのチビは! この俺様に正面から盾突くなんていい度胸だ!」


「俺も気になったからねぇ、調べてみたんだぁ」


 香城は資料を焔の目の前に差出た。そしてその内容を読み上げる。


「山田三郎太、一般家庭の三男坊。幼少より成績優秀で学業奨学生の入学テストも好成績。性格大人しく控えめ。目立った問題行動はなし、だって」


「ほう、確かに頭は相当切れるヤツだった。しかし、なんの後ろ盾もない一般人がよくもこの学園であんなに堂々としていられたもんだ」


「それがねぇ、成績は優秀みたいだけど……体育の成績が2らしいんだぁ」


「は!? あんな動きしてたヤツが? 普段は偽装してるってことか?」


「それがそうでもないらしいんだよぉ。本気で運動神経悪いって体育教師からのお墨付きでね、本来は1の所をその真面目さでおまけして2らしいよ。わざわざ偽装するならそんな目立つ成績じゃなくて平均をキープするでしょ?」


「そうだが、じゃあどういうことだ」


「……俺、ちょっと前から気になる子がいるんだぁ。すっごく美人さんでね、今まで出会ったことがないタイプだからどう接していいかわからないんだけどぉ」


「突然なんだ、お前の女の話など今関係あるのか」


「うん。はじめてちゃんとお話しした時に、彼女3階から平気で飛び降りたんだ。なんかね、ふわっと舞い降りたって感じぃ? 羽根の生えた天使みたいだったぁ」


「は?」


「如月玲那ちゃん。一度生徒会入りの話が出たのに会長の我儘で取り消しになった子だよ。彼女、山田三郎太君と一緒のクラスでね、仲いいみたいなんだよ。成績優秀、運動神経抜群。普段の様子からじゃちょっと考えられないんだけど、実際はゲーム中のあんな動きが出来ても不思議じゃない。背格好も山田君とそれほど差はないしね。他の生徒の証言で彼女ゲーム中は観戦席でずっと観戦していたって裏はとれてるんだけど、もしかしたら、ね」


「入れ替わっていたかもしれない、ということか」


「証拠はない、ただの憶測にすぎないよ」


「本当だったとして、何故如月財閥の令嬢が奨学生如きのために動くんだ?」


「それは俺にもわからないよぉ」


 俺様にこの屈辱を与えたヤツが本当は一般人ではなくあの如月財閥の令嬢?


 なんの冗談かと思うが、今思い返しても、あのゲームの時のヤツは一般人とは思えないほど威風堂々たる姿でこの俺様と向き合っていた。


 ここはやはり


「確かめてみるか」





◇◇◇




 翌日。焔は1年5組にやってきた。




「おい、山田三郎太はいるか?」


 突然のことにクラスはざわつく。


 目当ての生徒を探すとヤツは自ら目の前にやってきた。


「は、はい! 山田は、ぼ、ぼ僕です!」


 名乗りあげた山田を頭の先からつま先までじっくり見る。


 やはり、焔は思った。


「違う、な。 お前あの時の山田じゃねーだろ」


「ひゃ、ひゃい!? や、山田は僕ですよ!」


 確かに、山田三郎太はこいつなんだろう。だが、あの時の俺様を前に堂々と向き合ったヤツとは別人だと確信した。


「覇気が違う。話し方が違う。姿勢が違う。そもそもお前体育の成績5段階評価の2だろ? しかもお情けでオマケしてもらって2。本来なら1に該当する運動音痴だと報告がきている。そんな奴があんな動きできるわけがない」


 こいつは醸し出す雰囲気からして鈍くささがある。運動のできない典型的なガリ勉メガネだ。


「は、はぁ」


 そして近くにいた如月玲那に視線を移す。

 

 改めて近くで見れば、その風格と見かけを裏切る強者の匂いがすべてを物語っている。


 ああ、こいつだ。


 こいつがあの時の山田だ。


 上流階級でもカーストのさらに天辺にいるようなこいつが、何故俺様に刃向ってきたのかはわからない。だが……


「まあいい。おい、あの時の山田、今回のゲームは確かに俺様の負けだ。お前の出した条件、ちゃんと飲んでやろう。だが、受けた屈辱は決して忘れない。覚えておけ」



 如月玲那に俺は宣言する。


 

 今はまだお前の真意を探るため、泳がしてやろう。



 だがいずれ必ずこの屈辱を晴らさせてもらうぞ。






 興味×敵意=?

Q.何故バレた?


①前にやらかしたことが仇となったから

②山田君が運動音痴過ぎたから

③玲那様の醸し出すオーラが隠し切れなかったから




A.正解は……①②③全部だ!

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