ゲーム終了!
◇◇◇
撃たれた生徒はわけが分からなかった。
風紀委員長に撃たれた。
何故? 彼らは僕たちを助けてくれたんじゃないのか?
ああ、彼は山田君の指示に従っていた。山田君は標的役。彼が生き残るには今度は僕たちが邪魔ってことか。
なんだ、単純なことじゃないか。
はは、はじめからこんなゲーム生き残れるなんて思ってもなかったじゃないか。それなのに期待なんかして。
誰だって自分が一番。
つまりはそういう事だろ。
もしかしたらなんて、馬鹿な考えだったんだ。
◇◇◇
「ピンポンパンポーン! 終了時間だよー! 皆お疲れ様ぁ、持ち場に戻ってねー」
香城がゲーム終了のアナウンスを流す。
静まり返っていた場の雰囲気は壊れ、重たい空気だけが残る。
「なんだ、つまらん。あっさり決まってしまったか」
おそらく想像通りの結末だったのだろう。心底つまらなそうに会長はつぶやいた。
「ねえ、会長がルール。会長が言ったことは絶対。これは間違いないんだよね」
玲那は朱雀門焔をまっすぐに見つめ確認の質問をする。
「無論、俺様が絶対だ。で、生き残った唯一の標的のお前、望みはなんだ? 貧乏人にはありがちな金か? それとも女か? 言ってみろ」
「俺の望みは、奨学生の学生としての本分をまっとうさせること。将来のために、より良い学びを得るためにこの学園に入学した。それなのに学びの時間さえもまともに受けることが出来ない生徒もいる。だから学ぶということを邪魔しないで欲しい」
一般人と玲那達のような財閥の子息や令嬢たちとでは価値観が大きく異なる。家の格で人の優劣をつけるなんておかしいことだが、それがここのルールだ。それを根底からなくすことは恐らく無理だろう。
それでもみんな学ぶために学園にやってきたのだから、学ぶ権利だけは絶対に冒してはならないと玲那は思う。だから現状を変えるために、至極まっとうで、本来ならあたりまえのことを彼に望む。
「いかなることにおいても学業を邪魔するような行為をしてはならない。そう約束して会長」
「……いいだろう」
会長の了承の言葉に、標的役だった奨学生の皆は喜んだ。これで授業中はまともに授業を受けれるようになるんだ。それだけでこれまでとは比にならないくらい学生生活に希望が持てる、そう思った。
「だが、失格になった生徒には罰則がある。よって罰則により貴様のいった「学業を邪魔しない」という約束を無効とする!」
「「ええ!? そんなぁ!」」
希望を見出しては絶望に突き落とされる奨学生の生徒たち。
「残念だったな。だが、俺様を楽しませてくれた礼に貴様だけは罰則なし、希望通り学業を受けさせてやろう」
高笑いし始めた会長。
結局はすべて会長の思うがままということかと周囲が諦めムードになったとき、それまで黙っていた堂本が口を開いた。
「おい、待て」
撤収しようとしていた会長は堂本の声に振り向いた。
「ああ? なんだよ。文句あんのか堂本?」
「俺はまだ望みを言ってないぞ」
「はあ? なんで俺様がお前の望みを聞かなきゃなんねーんだよ」
「俺はルール上の一番多くの標的を討ち取ったスナイパーだ。生徒会に1つ望みを叶えてもらう権利がある」
「なに言って……!?」
終了間際、ここに集まった玲那以外の15人の標的を片っ端から撃ち抜いたのは堂本である。標的の半数である15人。他の標的はそれぞれ別の生徒が打ち抜いていたため堂本が最も多く標的を討ち取ったスナイパーなのである。
これまで朱雀門家の焔に逆らった者はいない。たとえスナイパーのご褒美を望まれても、それは焔にとって都合の悪いことなど望む生徒はいないという考えのもと付け加えられたもの。
だからこそ、堂本の発言に焔は焦った。関係の良くない風紀のトップ堂本龍兒が焔に望むことなどろくなことではないと想像がつくからだ。
「俺はお前が言った失格になった標的の罰則を無効にすることを望む」
「ふざけるな! そんなこと許すわけが「会長!」
会長の言いかけたことを玲那の声が切る。
「会長は言いましたね、会長が言ったことは絶対だと。では自分の言葉に責任を持って下さい。それとも、自分の言葉は絶対、自分がルールだといったその内容に逆らいますか? でも、そんな自分の言葉に責任の持てないような人がトップの地位にいて誰がついていこうと思うのでしょうね」
「んなっ!? や、っくそ!!」
言葉にならない感情で顔を真っ赤にした会長。
「ちゃんと俺様ルールを会長も守ってくださいね?」
会長を放置してその場を後にする玲那と風紀メンバーであった。
「では、そういうことで! 皆お疲れさま! 風紀の皆は今回大活躍してくれたから特別報酬をだしましょう!」
「やったー! 俺この前差し入れしてくれたコンソメ味のポテチ欲しい」
「んじゃー俺うまか棒! 納豆味がいいな!!」
「俺はねー何にしようかなー」
「あんたたち安上がりで涙がでそうだわ(笑)」
風紀の間ではひそかに玲那が差し入れたスナック菓子が大流行中であった。皆この歳まで食べたことがなかったそうだ。派手な成りしてチャラチャラしているが皆お金持ちのお坊ちゃま。初めての味に衝撃をうけたらしい。
ちなみに堂本は協力した見返りに後日堂本家に出向き、堂本の家族に挨拶しにきて欲しいと言われた。よくわからんが面倒。スルーするつもりである。
こうして玲那達の勝利でゲームの幕は下りた。
◇◇◇
ゲームの翌日。
「おい、山田三郎太はいるか?」
教室に生徒会長の朱雀門焔が現れた。
突然のことにクラスはざわついた。
玲那はさりげなく山田に近づき、彼の背中を押す。
突き出された山田は仕方なく名乗り上げた。
「は、はい! 山田は、ぼ、ぼ僕です!」
目の前の山田を頭の先からつま先までじっくり見る会長。
「違う、な。 お前あの時の山田じゃねーだろ」
「ひゃ、ひゃい!? や、山田は僕ですよ!」
震えながらも全気力をもって答える山田少年。その様子をクラスメイトは心のなかで応援する。頑張れ山田。負けるな山田。
「覇気が違う。話し方が違う。姿勢が違う。そもそもお前体育の成績5段階評価の2だろ? しかもお情けでオマケしてもらって2。本来なら1に該当する運動音痴だと報告がきている。そんな奴があんな動きできるわけがない」
「は、はぁ」
あれ成績表の2って先生のオマケだったんだといつもは鬼のように厳しい体育教師にちょっぴり感謝した山田であった。
そして近くにいた玲那をジロジロ観察し始めた会長。
そして納得したという表情をし、山田少年ではなく玲那を見ながら話はじめる。
「まあいい。おい、あの時の山田、今回のゲームは確かに俺様の負けだ。お前の出した条件、ちゃんと飲んでやろう。だが、受けた屈辱は決して忘れない。覚えておけ」
言いたいことをいって会長は教室を出ていった。
会長がいなくなりクラスメイトが玲那と山田の傍に駆け寄ってきた。
「如月さん……」
みんな心配そうに玲那の顔をみる。
玲那は山田少年の肩に手をのせ謝罪する。
「山田君、せっかく女装してくれたのに無駄になったみたいだわ」
朱雀門焔。ただの俺様バ会長かと舐めてたようだ。
つづく
やたーゲーム終わったぁヾ(*`Д´*)ノ"
ぎゃふんは言ってくれなかったけどなんとか会長のメンツは潰した…ハズ?
会長が俺様俺様言い過ぎて執筆中何度そのキャラに萎えたことか。
しかもなんか会長キャラ定まってない?ような?
さて、ゲームはこんな感じで終結したわけですが、読者様に楽しんでいただけたかちょっぴり不安。雪国は中身のつまってない頭で必死にゲームシナリオをつくってみたものの満足していただけるものになったでしょうか。
こんなもん想定内のシナリオじゃボケぇな読者様には申し訳ないです。
長らく中途半端にしていたサバイバルゲーム編終了です!
せっかく替え玉用意してアリバイ工作したのにバレてた玲那ちゃん。
果たしてどうなる!




