俺様がルールだ!
◇◇◇
山田視点
巨大スクリーンには会長達が如月さんたちのいる図書室に向かう姿が映し出されている。
残り30人くらいだったスナイパーは道中の風紀委員の狙撃で今は会長含め15人にまでなった。人数的にはもうそれほどの脅威ではない。
ただ、あの会長が自ら出向いて標的の生徒を一掃しようとしていることが不安でたまらない。
「如月さん大丈夫かな?」
「ちょっと! 今はあなたが如月さんでしょう? 発言には注意してください」
隣にいた柏木さんに窘められる。
「ご、ごめんなさい」
そう、僕は今、如月さんの制服を着て観戦席で柏木さんとモニターをみている。
如月さんが僕の制服を着て僕に成り変わり、僕が如月さんの制服を着て如月さんに成り変わっている。特殊メイクで顔もつくり、声もボイスチェンジしている。
別に僕まで変装する必要はないと思うのだが、「如月玲那はちゃんと体育館で観戦していた」というアリバイはきちんとしていないと後々困るのだと言われた。
「うう、足がスースーするよ」
「黙ってなさい。ああ、本当なら私もお姉様のお近くで一緒に活躍する予定だったのに……あんたなんかのお守りをするなんてお姉様のお願いじゃなかったら……」
僕を睨みながら不満を口にする柏木さん。
本当にごめんなさい。
「でも、あなた体格が小柄だから? 妙に女装似合うわね」
「そんなこと言われても嬉しくないです……」
ああ、早くゲーム終わって欲しい!
◇◇◇
近くで人の話声、大きな物音がした。
「いらっしゃったみたいね」
玲那は両手に持ったペイント銃を構える。
図書室の扉が開かれたと同時に中にいた風紀のメンバーは一斉に射撃する。
飛び込んできたスナイパーは手前にいた生徒を盾にし、こちらが弾を切らしたところで反撃してきた。
手前にいたスナイパーは討ち取ったもののスナイパーの反撃で何名かの風紀委員が武器を手放す。
お互いある程度打ち合ったところで一瞬の静寂が場を支配した。
そしてその静寂を壊したのは会長の言葉だった。
会長の朱雀門焔はスナイパーの生徒を後ろに下げ、ひとり前にでた。
「こんなところにゾロゾロ隠れやがって、よくもこの俺様の目を欺いてくれたな」
そんな会長の前に玲那が立ちはだかる。
「こうでもしないと生き残ることなんて無理でしょこのゲーム」
「ああ? このゲームは標的が生き残るなんて考えてねーよ。ただ俺様の目を楽しませる。そのためだけのゲームだ」
「つまんないゲームだね。だから(わたしっじゃなかった)俺が楽しくしてあげたんじゃないか」
「そうだな、確かに少し退屈していた。お前のおかげで面白くなったのもある」
「でしょ?」
「だが、俺は誰かの手に踊らされるなんて我慢なんねぇ。このゲームは俺様がルール。駒を動かし、操る。シナリオもエンディングも決めるのはすべてこの俺様だ!」
「ふーん。で、どうするの? あと少しで制限時間だよ。こっちは君たちを撃退できるだけの武器はまだある。最悪相打ちになっても標的の子たちは撃たせないよ」
玲那と残りの風紀メンバーは武器を持ち変える。まだペイント弾の蓄えもある。この状況で不利なのは会長たちのほうだ。
「言ったろう? 俺様がルールだと。残り5分ある。ここで最後の追加ルールだ。標的の生徒は生き残った最後の1名のみ褒美の条件を叶える。もし最後の1名が決まらない場合は全員失格。残り時間せいぜい標的同士で潰しあうがいい!」
会長の言葉を聞いた標的の生徒は絶望を味わう。このまま時間が過ぎればみんな助かる。そんな希望が最後のルールで消えてしまった。
生き残りたい。
これ以上厳しい懲罰なんて受けたくない。
例え他の人を蹴落としてでも……
しばらく誰も動かなかった。
時間だけが過ぎる。
このままでは自分が失格になると焦った標的の生徒が近くの武器に手をかけようとした時だった。
「先輩」
玲那が堂本の方を見ず声をかける。
「ああ、わかった」
堂本は銃を構える。
その銃口は玲那を除く標的の生徒の頭を寸分の狂いなく撃ちぬいた。




