終了までのカウントダウン
◇◇◇
紫苑視点
――――別室モニタールーム
別室で特別観戦席をモニタリングしていた生徒会書記西園寺紫苑は動き出した会長を見てインカムに話かける。
「こちら、西園寺」
「はい、こちら山田」
インカムの向こうからは楽しげな彼女の声が聞こえてくる。
「会長、気づいた。そっち向かった」
「了解!」
「……楽しい、の?」
はじめはゲームに協力する気などなく、いつもの如くサボる気でいた。しかし玲那と聖治にどうしてもと言われ仕方がなく会長達の動向を監視する役を引き受けた。
圧倒的不利な状況で、策を巡らしたギリギリの状況の中を何故そんなに明るく楽しげにしているのか西園寺には理解できなかった。
「ええ、楽しいわ! やっぱり学生だからこそこういうイベントに熱くなれるし、ああ自分青春してるなーって実感する」
彼女は心の底からゲームを楽しんでいるようだった。でも……
「もし、失敗、なったら、わかってる?」
「できるだけのことはした。これで失敗したら計画立てた私の責任。協力してくれた皆には迷惑かけないよう責任を取るわよ」
急に彼女の声音が変わった。そう、彼女はすべてわかった上で楽しんでいる。
「まあ見ててよ、もうすぐあのバ会長をぎゃふんと言わせてみせるから!」
「……(ぎゃふん?)」
こんなゲームのどこが楽しいのかはよくわからないが、楽しそうにしている彼女を見ていると心が動かされる。
ワクワク? ドキドキ?
むずむずする期待感と、おそらく彼女の計画通りにいけば見ることができるであろうぎゃふんと言わされた会長の姿を想像し誰もいないモニタールームで口角を上げ無自覚に微笑む西園寺であった。
◇◇◇
「さて、もうすぐここに会長達がくるわけだけど、準備はできてる?」
「大丈夫だ」
「「「いつでもOKッス!」」」
玲那達は第1図書室にいた。迷路のように入り組んだ本棚の影には風紀委員がペイント銃を構え配置されている。
標的の生徒は開けた読書スペースにまとまっていて、その通路の前を玲那と堂本が塞いでいた。
玲那のインカムにはクラスメイト達から「頑張ってください!」「どうか無理はせずに!」「何かあったときは近くのヤツを弾除けにして下さい!」様々な声が流れる。
それが可笑しくて玲那は笑ってしまった。
◇◇◇
困惑するモブ視点
連れてこられた標的の生徒は困惑していた。
自分たちを討ち取るわけでもなく強制的にこの場所まで連れてこられ、なんの説明もないまま時間が経過。
自分たちを取り囲んでいるのは恐らく風紀委員。普段は風紀らしい活動など何もしておらず、逆に取り締まられるべきは風紀の方だった。しかし最近は真面目に活動していた。その彼らが何故こんなことをしているのか?
そして一番の疑問はメガネの小柄な少年。
標的である1年の山田君。何故彼が風紀に指示をだし、何故それを大人しく風紀が聞き入れている? 風紀のリーダーは風紀委員長の堂本だろう?
堂本は自ら指示を出すわけでもなく、テキパキ指示を出す山田少年の傍を離れず忠犬の如くあとをついて回っている。
そしてこんな状況なのに笑っている山田少年。
何がなんだかわからない。
わからない……が、この状況で笑っていられる彼にしたがっていれば、自分たちはもしかしてこのゲームを生き残れるのではないか。
これまで抱いたことのない淡い期待が生まれる。
もしかしたら、もしかするかもしれない。
ゲーム終了まであと―――――――――
視点コロコロ変わって読み辛かったら申し訳ない。
3視点詰め合わせパックです。
ゲーム編楽しくてもっと話広げようと思えば広がるんだけど……
このイベントだけでどんだけ話数食ってんだ!な感じですので(・◇・)
あと1話か2話でまとめます。たぶん。




