ゲーム進行!!
標的の生徒を助けるため道中でエンカウントしたスナイパーの生徒を10名片づける。顔面にペイント弾を撃ち込んだためギャーギャー喚いていたが堂本先輩のひと睨みで大人しく退散していった。
なんて便利なんだ堂本先輩。一家にひとり欲しいくらいだ。
そして目的地である倉庫の中に入る。
倉庫の奥には2名の男子生徒がぷるぷる震えて座りこんでいた。
「君たち、大丈夫?」
玲那はできるだけ優しく話かけた。しかし――――
「透、僕たちもう終わりみたいだね」
「そんな……諦めるのか祐介! 一緒に2人で最後まで逃げ切ろうって約束したじゃないか! こんなところで終わるなんて!」
2人の世界に浸っている彼らに玲那の言葉は届いていなかった。
玲那は男子生徒を前に無言で2人のやり取りを見ていた。
「おい、貴様ら。話をっ!?」
堂本先輩が無理やりこちらの話を聞かせようとしたため玲那は慌てて先輩の唇に自身の右手を押し付けた。
彼らを見た玲那は思ったのだ。
(リ、リアルBLキタ━━━━━!!!!!)
玲那はもともと腐女子であるが、最近はネタ不足で萌えるに萌えられないでいた。どちらかといえばこの学園は女子生徒の方が人数も多く、ごくまれに百合カップルは目にしていたものの、BLカップルなんて見たことがなかった。
そんな萌不足の前に降臨したモブ男子同士のイチャイチャ。玲那の中の一部がマグマの如く萌え滾った。
彼らが単に仲のよい友人同士であるとかそんな事実は置いといて、玲那の頭には薄い本1冊分くらいの彼らのストーリーが出来上がっていた。
「先輩、彼らはしばらくこのままそっとしておきましょう。風紀のメンバーでここを固めて、時間前になったら例の場所に移動させてちょうだい」
「……わかった。お前がそれでいいなら」
いまだに2人の世界に浸る彼らを残し、玲那と堂本先輩は残る標的生徒を見つけるためその場をあとにした。
玲那と堂本は風紀委員のメンバーやクラスメイトの力も借り順調に標的の生徒を救助していった。
助け出した標的の生徒はカメラの回線を細工してある教室に集め、そこを風紀のメンバーで守らせている。役15名。標的の半分は保護した。しかし、それだけの標的がカメラから姿を消しているのだ。そろそろ気づかれるだろう。
制限時間まで残り20分を切った。面白半分で参加していたスナイパーの生徒はまさか反撃を食らうなど思ってもみなかったものが大半で、玲那たちがやった顔や胸にペイント弾を撃ち込まれた悲惨な姿のスナイパーの生徒をみてやる気をなくし早々に銃を放棄して観戦側に回ることにした。
「たぶんもうスナイパーは50にも満たないくらいしかいないんじゃないかしら」
「俺とお前で100くらいは討ち取ったはずだ。風紀の奴らも相当応戦したみたいだからおそらくそれくらいしかいないだろう」
標的はもう10人以上討ち取られている。数名は今も逃げまわっているが捕まるのは時間の問題。しかしその時間も残りわずか。
「さて、そろそろ相手も重い腰を上げてくる頃ね」
◇◇◇
「ねー会長? なんか標的の数少なくない? さっきからどのモニターみても半分くらい映ってないんだけど」
香城はモニターを眺めながら不思議そうに呟いた。
「ああ? そんなわけ……確かに、明らかに少ないな。どういうことだ?」
「監視カメラには死角もあるけどさー、それにしたって標的が映ってなさすぎだよ」
香城と焔はモニターを端から端まで眺める。
「……おい、ここの24番のカメラ。さっきから見てるがまったく画像が動いていないぞ。生徒一人も通りすぎないっておかしいだろ」
「ホントだ、もしかしてこれって」
「ふん、そういうことか! おい残りのスナイパーをこの場所に向かわせろ。総攻撃だ!」
焔は言い放つと自分用のペイント銃を手にして特別観戦室から出ていった。
そして残りのスナイパー全員に鼠が逃げこんだ場所が告げられる。
「悪いが標的はひとりも生き残らせる気はない。 いいか皆! 残りの奴らを一掃するぞ!!」
残り時間17分56秒。
その手に勝利を掴むのはどっち?
つづく




