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あ、閃いたかも

 サバイバルゲームの内容が告知されクラスが異様な盛り上がりを見せるなか、玲那は考えていた。


 如何にこのゲームを楽しむかを。




 はっきり言ってしまえば標的にされた生徒が生き残る確率なんてほぼない。

 ゲームの状況はリアルタイムで中継され標的が何処へ逃げようが隠れようがその様子をカメラがとらえ観戦する生徒のみる巨大スクリーンに映し出されるのだ。

 観戦する生徒がスナイパーの生徒にその様子を携帯などを使って情報を流せば標的に逃げ場はない。

 

 最初から標的が生き残ることなんて考えてもいないこのゲームのシナリオ。だからこそ、生き残った標的のご褒美は生徒会に望みを叶えてもらえるという非現実的なもの。私がゲーム主催者側だったら何を言われるかわからないそんな危険なご褒美なんて絶対言えないけどね。例えば賞金1億円くれっていわれたらあげるのかしら……まあ、ヤツならポンと1億ぐらいだしそうだけど。お金じゃ片付かないことだって要求されるかもしれないのに、負ける可能性を全く考えていないのだろうな。




 残念ながら私は標的には選んでもらえなかった。


 ええ、残念ながら。


 だって楽しそうじゃない。絶対的不利な条件。誰もが勝てないと考えている標的。生き残れば叶えられる自分の願い。めちゃめちゃワクワクする。


 しかし、標的役は指名された生徒。


 私は指名されなかったからスナイパーとしてしか参加できない。スナイパーじゃつまんないじゃない。それに、自分が狙撃して脱落させたせいでその標的の子が懲罰受けるとか後味悪いし。


 ああ、標的役やりたい。誰か代わってくれないかな。


 なんとなくクラスを見渡し、ひとりの男子生徒に目がいった。



 彼は山田君。このクラスの奨学生だ。ゲーム告知のプリントを握りしめ、ぶるぶる震えている。


 そう、彼は標的役として選ばれている。



 ……あ、閃いたかも。



 玲那は山田君に近づき身体のサイズを調べる。



「山田君、ちょっと失礼」


「え、ちょな、なにするの?!」


 突然のことに驚く山田君。それはそうだろう。誰だっていきなりクラスメイトに体を弄られたら驚く。


「うわ、ウエストほっそい。負けたかも? ふむ、身長も同じくらいだしイケるか。あ、メガネとるよ……何よ、漫画でよくあるお決まりの設定か」


 がり勉メガネをとってみたらその下にあったのは少女のような童顔のお顔。ダサいメガネと野暮ったい髪形で隠れているのがもったいない。BLの世界にいったら総受けできそうなキャラの顔だ。

 この顔でもしかしたら苦労してきてわざと隠しているのかもしれない。見なかったことにしてメガネをもとに戻す。


 だが、これならいける。


「よし、みんなちょっと作戦会議しましょうか!」


 玲那はクラスメイトに向き合った。


 突然のことであったが、ざわついていたクラスは静かになり、取りあえず皆自分の席についた。


「みんなこのゲームの告知は読んだよね? これについてどう思う?」


 玲那はクラスメイトに問う。


「私は、あまりこういう野蛮なもの好きではありませんわ」


「私も。この標的にされた方のことを思うと気の毒で……」


「俺は楽しそうだと思うけど、標的は絶望的だよな……」


 皆ちらちら山田君の方をうかがう。最近は山田君の存在もクラスに馴染みいい関係が築けていただけに何とも言えない様子だ。おそらく入学初期のクラスだったなら喜んで山田君を吊し上げ、彼の心情を気遣う人なんていなかっただろう。


「そうね、こんなルールじゃ皆面白くないわよね。そこで、皆にちょっと手伝ってほしいの」


「まあ、いったい何をなさるのですか?」


「取りあえず大雑把にだけど、クラスの3分の1はモニターから情報を伝える伝達班。残りは武器調達のためスナイパーとして参加してほしい。もちろん本当にスナイパーの仕事をするわけじゃないわ。いろいろやってもらいたいことがあるから実動班ね。このサバイバルゲーム、私たちは私たちでゲームを楽しまない?」


「あの、如月さん僕はどうすれば……」


 山田君は不安げにこちらを見ている。


「大丈夫! 君はただ見てるだけでいいの、心配しないで!」


「え、見てるだけっていっても、僕運動神経ないからすぐに脱落してしまうだろうし」


「いいえ、山田君。あなたには大人しくゲームを観戦していてもらいます」


「へ?」



 作戦は思いついた。あとはゲーム本番まであれこれ裏で手を回さなくちゃいけないことがたくさんある。聖治にも、風紀のみんなにも動いてもらわなきゃ。あードキドキしてきた。


「よーしみんな! ゲームを思いっきり楽しみましょう!」


「「「「お、おー?」」」」

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