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モブ男子こと山田三郎太と申します

山田視点

 こんにちは、モブ男子こと山田三郎太と申します。ええ、どこにでもいるモブの山田とは僕のこと。脳筋バカな2人の兄を反面教師にして育ち小さいころからガリ勉で取り柄はちょっと人より勉強ができるだけ。あだ名は安定のメガネ君でした。

 小学校の担任に勧められ中学は桜坂学園を受験。ダメもとで受けてみたのにうっかり合格してしまった。両親、クラスメイト、小学校の担任、教頭、校長が大喜びの狂気乱舞。


 僕の時代キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!!


 僕は勝ち組、待っているのは薔薇色の青春、約束された将来の栄華。


 入学前はそう思っていました。


 でも、一般ピーポーな僕がセレブな名門桜坂学園に入学したのが間違いだったのです。


 清楚なお嬢様達に囲まれて、もしかしたら美少女な彼女とかできたりしてとか夢みていた僕が馬鹿でした。


 この学園はセレブと庶民の線引きがされたセレブの、セレブによる、セレブのための学園だったのです。僕たち庶民な奨学生はセレブの退屈を紛らわせるために投入された道化だったのです。


 奨学生の扱いについてですが……。


 陰口? いいえ、教師の前だろうがなんだろうが堂々と罵られます。汚物が、下等生物が、虫けらが、と言われ人としてとらえられていないような罵倒が公然と本人に投げつけられます。


 暴行? ええ、彼らの気に入らない言動をとろうものなら容赦なく殴り蹴られます。誰もとめたりしません。笑いながら、楽しそうに暴力を振るいます。


 なかには教室の机が撤去され、床に座り込み授業を受けてる人もいます。勉強しに学園に来たのにまともに授業も受けさせてもらえないとはどういうことなのか。

 精神的に肉体的に疲労しながらも奨学生の僕らは成績を落とすことが出来ないためどんな状況でも必死に授業に食いついていかなければなりません。


 この学園に多額の寄付をしている彼らは何をしても許されるのです。


 そして僕らにはそんな暴君な彼らに抗うすべなどないのです。


 転校すればって? 逃げたら彼らは権力を使ってどんな行動にでるかわかりません。両親の職を奪われるかもしれない。将来の就職の道を断たれるかもしれない。そう思うと逃げられません。

 卒業まで我慢すれば履歴書に桜坂学園卒業と書き込むことができる。それはありきたりな資格、検定で履歴書の蘭を埋めるよりも絶大なセールスポイントになる。この学園を卒業すれば将来のエリートコースが約束されたようなもの。だからみんな耐えるのだ。


 そう、僕もなんとかしてこの学園生活を乗り切るんだ!




 ……といっても、実は僕、そんないじめられてないんだよね。てへ。



 そりゃあ、周囲から冷たい目で見られたり、汚物扱い受けることはあるけど実害はほとんどない。それは同じクラスにいる如月玲那さんのおかげだ。


 あの大財閥のご令嬢。成績優秀、眉目秀麗、運動神経抜群。外見だけじゃなく性格もいい。これぞ完璧人間を体現した人だ。


 彼女は僕たち奨学生にもその他の生徒にも態度が変わらない。平等にみんな同じ扱いをする。



 数学の課題が出されたときのことだった。その課題はなかなかに難易度の高いもので高校レベルの問題が混じっていた。僕は数学が大好きだから参考書を見ながら解いて課題を終了させた。すると僕の手元をみていた如月さんが話しかけてきた。


「山田君もう課題終わったの? ね、私この4問目の所どうやっても答えが合わないのよ。ちょっとみてくれない」


 僕は彼女に話しかけられたことに驚きながらも渡された課題をみた。


 4問目以外はすべてぎっしり答案が埋まっていた。ああ、美しい数式だ。余分なものがなく、そうあるべき道筋にまっすぐにたどりついている。筆跡はまるで人の手で書いたものとは思えないほど綺麗に整っていた。それに見とれつつも4問目を見る。ざっと見たら使っている公式にも間違いはないようだが……あっ。


「ここの途中式計算ミスしてますよ。ここ直せばあとはそのままで解けるとおもいます」


「ああ、本当だわ。ケアレスミスね、ありがとう自分じゃなかなか気づけなくて」


 彼女は悩んでいたのがすっきりしたのか小さく笑顔を浮かべた。


 可愛い。


 綺麗。


 可憐。


 そんな単語が頭を駆け巡る。こちらを見ていた周囲の男子生徒、女子生徒も彼女の笑顔に見惚れる。


 黙っていても綺麗な彼女だが、そこに表情がのせられるだけでより一層輝きが増す。笑顔のときなど眩しいくらいに。彼女が時折見せる笑顔は作り物じゃない。見るものをほっとさせるような温かく優しいものだ。そんなレアな笑顔に癒され、本当にこの人と一緒のクラスになってよかったと思った。


 彼女の僕に対する対応をみて、このクラスメイトはそれほど酷い行為はしてこない。


 最近では彼女に話しかけるクラスメイトが増え、その如月さんを通して僕にも普通に話しかける人がでてきた。


 僕に対する言葉の表現も最初よりだいぶやわらかいものになってきた。


 クラスの雰囲気も徐々によくなってきて普通のごく一般的なクラスの日常になってきた。








 そんなある日に告げられたサバイバルゲームの開催。


 ええ、標的の30名にばっちり僕も入ってますけどなにか。



 僕、終わったな。


 僕、運動神経ないんですよ。生まれる前に兄達に吸い取られたかお母さんのおなかの中に置いてきたみたいなんですよ。50メートル全力で16秒ですけど。カメですよ、カメ。


 そんな僕がこんなゲームで生き残れる可能性なんか0パーセントなんですよ。


 脱落したときの懲罰って何かな。痛い系かな。辛い系かな。僕まだそういうの味わってないから耐えきれるかな。嫌だ嫌だ。絶対むりだって。


 絶望している僕に如月さんが近づいてきた。


「山田君、ちょっと失礼」


 彼女はそういうと僕の体を触りはじめた。


「え、ちょな、なにするの?!」


「うわ、ウエストほっそい。負けたかも? ふむ、身長も同じくらいだしイケるか。あ、メガネとるよ……何よ、漫画でよくあるお決まりの設定か」


 如月さんはそういうとメガネをもとに戻した。そして僕を解放するとクラスメイトに向かって言った。





「よし、みんなちょっと作戦会議しましょうか!」





 

 え?

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