第1法 「十字架の彼女」
王宮はすぐそこなので、ラモール、ムーナイト、アレンは馬車から降りた。ムーナイトの顔の痣も、ラモールの入国審査の服の溶けも、すっかり直っている。
降りると、そこには大きな王宮が立っていた。
「これから僕たち、何をすれば良いのでしょうか」
ムーナイトが聞く。
「君たちの〈師匠〉の元で、魔法の勉強をしてもらうよ。君たちには才能があるからね」
「「本当ですか!?」」
ラモールには、〈師匠〉というものがどういうことなのかわからないので、そわそわしていた。
空を見上げた。
そこに、あまり覚えていない両親の姿が見えた気がした。ラモールは、心の中で『頑張るね』と言った。
視線を横へと移動させる。ラモールより小柄のムーナイトの頭部。美しい金髪が、風でなびいていた。
「ラモールくんは、どこから来たんだい?」
「えっ…______」
言葉を発しようとしたとき、ドンと小さな衝撃。
誰かとぶつかったのだ。それで、ぶつかった彼女の十字架のペンダントが揺れる。
「あ…すみません…」
消えそうな声だが、確かにラモールの耳には届いていた。しかもかなりの美声である。
「え…あ、ごめん」
ラモールは頭を小さく下げると、彼女は裸足のまま小走りして行った。白いワンピースが印象的だった。
「?」
ムーナイトが首を傾げている。しつこいようだが、そんな仕草さえも女性に見えた。
「あの女の子、見たことあるような…」
「えっ?」
「アレンさん、あの方をご存知ありませんか?」
「すまないね、俺は見かけたことないよ」
「そうですか…」
ムーナイトが俯く。
後にこの出会いが運命を変えることは、まだ誰もしなかった。




