第5話 第2次ソロモン沖海戦
「敵艦隊発見、距離2万5000メートル!」
見張り員が叫んだ次の瞬間、すさまじい爆発音がし、見張り員は艦の近くに巨大な水柱が立つのを見た。
ガ島砲撃部隊旗艦重巡「高雄」の艦橋にいた三川中将は突然の敵艦隊出現に愕然とした。
敵艦隊の出現には警戒してはいたもののまさか本当に出てくるとは思ってはいなかった。
しかしすぐに反撃に出ようとし、艦長に向かって言った。
「艦長、敵艦隊に向け突撃だ。距離を詰めて一気にやろう」
しかし艦長は、
「長官、本艦はほとんど砲弾を撃ち尽くしています。あと3斉射すれば弾薬庫は完全に空になります。それにさっきの砲撃から察するに敵は戦艦です。ここは引いたほうがいいと思います。潜水艦部隊も収容を完了しました。ここに踏みとどまっても犠牲を増やすだけです」
と撤退を進言した。
三川中将は一瞬攻撃すべきかどうか悩んだが、状況的に分が悪いし、任務も完了したため撤退を決意した。
「砲弾がないなら仕方ない、撤退しよう。全艦隊に命令、反転180度、最大戦速で当海域を離脱せよ」
艦長は「はっ」と敬礼して反転180度を命じて離脱を開始した。
しかし、軽巡洋艦「那珂」から信号が送られてきた。
「我が戦隊は戦力十分、攻撃許可を求む。重巡部隊の退却を援護す」
信号兵が信号を伝えると三川中将は敵戦艦に対して水雷戦隊を突撃させることに躊躇したが、本来日本海軍の水雷戦隊は敵戦艦を夜襲するために訓練されてきたことを思い出し、攻撃許可をだした。
ただし、深追いはせずあくまで重巡部隊の退却援護に徹するようにと信号を送らせた。
攻撃許可を受けた水雷戦隊の軽巡1隻と駆逐艦8隻は敵艦隊に向け突撃を開始する。
司令の田中頼三少将は敵戦艦にできるだけ接近して雷撃を行い、その後反転して島陰に回って海域を離脱しようと思っていた。
そのため雷撃の機会は一度のみ、各艦の水雷長に一回で確実に発射して命中させれるように魚雷の最終点検を行うよう命令する。
またあわせて信管の感度を鋭敏にしすぎないようにすることも命令した。
敵艦の起こす波に反応して早爆してしまうからだ。
現場では一発必中ということでかなり感度を高めに設定しているが、それが裏目に出てしまうことをこの歴戦の水雷屋は知っていた。
一方この間にも敵艦からの砲撃は続いている。
敵はレーダー射撃でありかなり正確な砲撃だ。
旗艦「那珂」のまわりも強大な水柱が立っては消えを繰り返している。
水雷戦隊は最大戦速でとにかく1秒でも早く近づこうと急いだ。
しかし突撃開始から8分後、大きな火柱とともに「睦月」の姿が消えた。
轟沈だった。
おそらく生存者はいないだろう。
田中少将は「睦月」の消えた方角を向いて1分間敬礼し犠牲になった将兵を悼んだ。
それから5分後、敵艦の艦影を捉えた。
しかし砲撃はしなかった。
砲撃の際に光で自艦の位置が正確に見えてしまうからだ。
レーダーに捉えられているとは言え、大して効きもしない砲を撃って自分の位置を完全に知られたくはない。
水雷戦隊は反撃もせず敵艦をひたすら追う。
そして3分後、射点に到達し次々に魚雷を発射した。
魚雷は戦隊で敵艦を包み込むように発射、何十本もの魚雷が敵艦に向かっていく。
敵艦はなんとか逃げようとしたがさすがに1個水雷戦隊分の魚雷をよけることなどできるはずもない。
敵戦艦と思われる大型艦に八本の大きな水柱が立った。
八本命中、大きな爆発が敵艦に起こり火災が発生、艦は傾き始める。
火災の明かりで敵艦の姿が暗闇に浮かぶ。
また、少し離れたところでも爆発が起きた。
どうやら外れた魚雷が護衛の敵駆逐艦に命中したようだ。
「あれは敵の新型戦艦じゃないか?今までにない型だ。これは大戦果かもしれんぞ」
魚雷を発射後、反転して最大戦速で離脱しようとしている「那珂」から望遠鏡で炎上している敵大型艦を見ていた田中少将が言った。
「そのようですね。皆に伝えてやりましょう」
艦長はそう言うとマイクを手に取り、部下に戦果を報告した。
「諸君、よく頑張った。我が戦隊は敵新型戦艦を撃沈した」
艦内の各所で大きな歓声が上がった。
飛び上がって喜びを爆発させる者もいたし、友と抱き合い感動を分かち合う者もいた。
艦長はしばらく兵達の喜びを聞いていたがそれを制して言う。
「安心するのはまだ早い。これより、最大戦速で当海域を離脱する。他にも敵艦がこの海域にいる可能性もある。最後まで気を緩めるな。以上だ」
こうして水雷戦隊は敵戦艦撃沈という大戦果を収め翌日ラバウルへ帰還した。
潜水艦による救出作戦も無事完了し、日本海軍は今回も勝利を収めることができた。
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