第4話 陸戦隊救出作戦開始!
前回の作戦会議でガ島からの部隊撤収が決定され、撤収作戦が立案された。
作戦の内容は潜水艦15隻を夜陰に乗じて接岸させ、部隊を収容しようというもので、さらにその支援のために重巡洋艦を中心とした艦隊を再びガダルカナルへ送り込み、敵飛行場や泊地を攻撃させ部隊の収容に気付かせないようにすることや、内地や台湾から増援を受けたラバウル航空隊に航空攻撃を盛んに行わせまだガ島を捨てる意思がないように米軍に思わせるようにすることなども決まった。
そして決定から約1週間後の1942年8月15日、作戦は決行された。
参加艦艇はガ島砲撃部隊が重巡洋艦5隻|[高雄 愛宕 摩耶 青葉 衣笠]、軽巡洋艦1隻[|那珂]、駆逐艦8隻[|陽炎 磯風 涼風 海風 睦月 弥生 望月 卯月]。
潜水艦は艦名は諸略するが、「巡潜3」型1隻、「巡潜甲」型3隻、「巡潜乙」型5隻、「海大4」型1隻、「海大5」型2隻、「海大6」型3隻である。
また、砲撃部隊の指揮官は前回と同じく三川軍一中将、潜水艦部隊は各戦隊からバラバラに引き抜かれているため第6艦隊司令官小松輝久中将が自ら指揮をすることとなり、ラバウルにいる軽巡洋艦「香取」から指揮することになった。
潜水艦部隊は8月14日に一足先に出港、ガ島周辺の偵察を行った。
入ってきた報告は「伊15」からの「敵駆逐艦2隻見ゆ」と、「伊9」からの「敵水雷艇数隻見ゆ」の二つで、どうやら小規模の哨戒部隊が配備されている様子だった。
一方艦隊は翌日の15日正午に出港し敵潜水艦に発見されないように対潜警戒を厳重にして南下した。
15日午後1時、ラバウル航空隊はガダルカナル島へ向け出撃した。
戦力は第1次攻撃隊は対艦用に魚雷を搭載した一式陸攻45機と護衛の零戦28機、第2次攻撃隊は陸用爆弾装備の一式陸攻53機と護衛の零戦32機が出撃した。
第1次攻撃隊はガダルカナル島上空に到着すると散開して、近くにいた敵艦艇に対し攻撃を開始した。
ルンガ泊地付近にいた米駆逐艦2隻には一式陸攻24機が襲いかかり両艦にそれぞれ3本の魚雷を命中させて撃沈。
また、島の裏側にいた輸送船3隻にも15機が攻撃を行い停泊中であったためほとんどの機が命中させ撃沈した。
他の機もそれぞれ攻撃を行い駆逐艦1隻とたまたま浮上していた不幸な敵潜水艦1隻を撃沈し、零戦隊は飛行場や敵部隊の宿営地に銃弾を撃ちこんでラバウルに引き揚げていった。
その後少し予定より遅れて第2次攻撃隊が到着、爆撃を開始した。
主に滑走路を重点的に攻撃し、そこらじゅうにクレーターができる。
零戦隊は隣のサボ島の島影に隠れていた水雷艇3隻を発見して機銃掃射で攻撃、うち2隻は搭載していた魚雷に命中したのか大爆発を起こして轟沈、もう1隻も爆発に巻き込まれて沈没した。
これによりこの時点でガダルカナル島付近にいた米艦艇は掃討され、一応ある程度の安全は確保されたことになる。
これを受け連合艦隊は作戦の決行を最終決定し、敵に発見されることを防ぐため分散して少し外洋の方へ行っていた潜水艦部隊に対しガダルカナル島近辺へと集結を命じた。
午後9時、艦隊はガダルカナル島水域へ侵入し砲撃の準備を開始する。
今回はある程度撃ちこんだらさっさと撤退するように言われているため砲弾を弾薬庫からズラッと並べて、少しでも早く終わらせて帰ろうとした。
一応万が一の敵艦隊出現に備え前方を駆逐艦「睦月」と「弥生」が警戒していたが特に異常は認められず、午後9時半に砲撃を開始した。
まず飛行場に対し砲撃を行い昼間の爆撃と同じく滑走路を目標に攻撃を行う。
夜間のため正確に滑走路へ撃つ込むのは難しい。
そのため、零式水偵を飛ばして照明弾を投下させ、そこへ砲弾を撃ち込んだ。
砲弾が炸裂する度に深いジャングルが光に照らされる。
砲撃部隊は予定通り砲撃を行っていった。
一方潜水艦部隊は砲撃開始とともに浮上し陸戦隊の収容を始めた。
兵員を潜水艦に搭載していたカッターを出して少しずつ収容していく。
人数が多く、カッターを何往復もさせねばならないため潜水艦達はギリギリまで岸に寄せていた。
「伊19」では艦長の木梨鷹一少佐が艦橋の外まで上がってきて現場を見守っていた。
この状況で敵艦艇に襲われたらひとたまりもない。
少佐を含め艦長達はさっさと終わらせて一秒でも早くこの場を離れたかった。
どうか敵部隊が出てきませんようにと祈るような気持ちである。
そして無事に2時間程で作業はほぼ完了し、出港準備に取り掛かった。
木梨艦長が出港直前に再び艦橋に上ると、まだ離れたところにいる砲撃部隊からの砲声が聞こえている。
頑張ってるなぁと思ったそのときだった。
ひときわ大きな砲声が響き、直後に大きな爆発音が辺りに轟いた。
何事だろうか、と思って音がしたほうを凝視していたが暗闇で何も見えるはずがない。
敵の弾薬庫にでも命中したんだろうと思って艦内へ戻ろうとすると電信兵が艦内から急いであがってきて、
「艦長!砲撃部隊から報告、『敵艦隊出現せり。敵艦隊は戦艦を含んでいる模様。潜水艦部隊は至急当海域を脱出せよ』とあります!」
と電文を読み上げて渡した。
「くそっ、さっきの砲声はその戦艦からか。全艦に告ぐ、敵艦隊出現。本艦はこれより最大戦速で当海域を脱出する。岸から離れたらすぐ潜行だ。機関始動、総員出撃用意急げ!」
木梨艦長は艦内に叫ぶと受け取った電文を握り締め、砲声のするほうを睨んだ。
その視線の先では今まさにソロモン攻防第2戦目、第2次ソロモン海戦の幕が切って下ろされていた。
今回は救出作戦の前編でした。次回は後編で敵艦隊との戦闘に入ります。
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