第13話 敵機動部隊発見!
「敵機襲来!戦闘機70、急降下爆撃機ないし攻撃機120、爆撃機60。距離、2万8000!」
見張り員の報告が伝声管から響く。
またすごい数の敵機が繰り出されてきた。
山本長官は3隻と推定される敵の残存空母すべてが出てきていると確信した。
「敵さんは全空母を持ってきているようだね。それもほぼ全力でこちらを攻撃してきている。宇垣君、敵はこちらの空母の存在をまったく気付いてないようだ」
山本長官は望遠鏡で敵機を追っている宇垣少将に向かって言った。
「そのようです。ここで味方の空母部隊が敵機動部隊の所在を早く掴んでくれるといいのですが…。でないとこちらが全滅してしまいます。航行していても『プリンス・オブ・ウェールズ』を我が軍の航空隊が沈めたように戦艦は航空機には勝てないようですから…」
さっきまではすごくイライラしていた少将が敵機の大群を見たせいかそれが収まって今度は珍しく弱気な発言をした。
「いや、あの戦艦には護衛機がまったくなかった。しかし我々にはある。もうしばらくの辛抱だ。……よし、きつい一発をお見舞いしてやろう。艦長、三式弾の射撃用意はできていますか?」
山本長官は艦長に問う。
三式弾とは対空用の主砲砲弾である。
砲弾の中にたくさんの子爆弾が詰まっていて、時限信管によって砲弾が爆発するとその子爆弾が周囲に飛散、あたりの敵機を撃墜するというもの。
実際にこれを使う機会など今まで無く、今回が初めての使用だ。
「はっ。全主砲いつでも撃てます」
艦長がよどみなくこたえる。
「よし全艦一斉に射撃する。取り舵一杯、距離1万5000で全艦撃て」
山本長官はそう言うと敵機に視線を戻した。
敵機はだんだんと大きくなっていく。
見張り員が距離をカウントする。
「距離2万、1万9000、1万8000、1万7000、1万6000、1万5000!」
「撃ぇ!」
艦長が叫んだのと同時に全艦の主砲が火を吹いた。
この距離だから駆逐艦の主砲でも撃てた。
ドォォン!!!
すさまじい爆発音とともに空が閃光で一瞬見えなくなった。
光が収まって山本長官をはじめ艦橋の全員が空を見た。
1機残らず落ちたのではないかという思いはあったがその期待は裏切られた。
しかし、まったく無駄だったわけではなかった。
「敵機接近中!約200機、まっすぐこちらに向かってきます!!」
見張り員の声が飛ぶ。
しまった、近寄せ過ぎて対空機関砲員がまだ配置につけてない、と長官は思ったが遅かった。
主砲の爆風を避けるため主砲付近の兵は発射の際艦内に避難していたのだ。
「後方より航空機飛来!友軍機です!約180機、陸軍の戦闘機も40機ほど混じっているようです」
伝声管から見張り員の声が響いた。
「第3艦隊第3部隊より電信、我が艦隊への敵機接近の可能性低し、我が艦隊は搭載戦闘機の全力をあげ貴艦隊を援護す」
「陸軍戦闘機部隊より電信、我が航空隊も海軍の決戦に参加、貴艦隊を援護す」
次々と報告が入ってきた。
「陸軍も援護してくれるのか、ありがたいことだ」
山本長官が呟く。
「海軍機が陸軍機を誘導してきたようです。陸軍機は海上飛行に慣れてませんし。しかし、陸軍機は『屠龍』、双発で若干動きの鈍い機ですが火力が高いので爆撃機迎撃には役立ちます。零戦じゃなかなか落ちませんからね」
草鹿少将が味方の編隊を見ながら言う。
陸軍航空隊は海の上を飛ぶことはほとんどなく、また飛ぶ必要もないため普通は海上飛行は不可能である。
しかし、海軍の作戦を知ったニューギニア方面の陸軍航空隊司令が海軍機の尻についていけば飛べると出撃させたらしい。
なんにせよ、戦闘機の数は多いがいい。
そして両軍の戦闘機部隊が交戦に入った。
さきほどの第1波とは違い迎撃戦闘機の数が多いためなかなか敵の攻撃隊は戦闘機隊を振り切れず、艦艇を攻撃することができない。
それに敵の護衛戦闘機の数が少ないため次々に爆撃機や攻撃機が撃ち落とされていく。
敵はこの激しい迎撃に耐えられなくなったのか次々に爆弾や魚雷を捨てて退避しはじめた。
「艦長、水偵発進!敵の後を付いていかせるのです。」
空戦の勝敗が付くと山本長官は振り向いて艦長に言った。
そして10分後、3機の水偵が発進した。
発進までは零戦が後を追っていて位置を教えており、水偵が追いつくと後退した。
そして後を追うこと1時間、眼下に敵機動部隊を発見した。
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