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売春島  作者:
8/12

スナック「絵美」

「だぁーっ!クソッ!どうなってやがる!!」

隆夫は民宿「みつこ」の部屋の中で荒れていた。怒りたいのは隆夫だけではない。僕も、そして陸も落胆を隠しきれないでいた。

スナック「絵美」では文字通り「何もなかった」のだ。確かに、昼にあった「優子」「ユキ」そして他に数人の女の子はいた。他の女の子もAクラスの可愛さで、普通に飲むのなら楽しかっただろう。そう、普通に飲むのなら……。

最初は何が起こるのか、僕もドキドキしていた。しかし、待てども待てども何も起こらない。女の子達はギラギラした目付きの僕らとどう接したら良いのか分からないように少しずつ離れて行った。そして一時間後、何も起こらないまま、僕たちはスナック「絵美」を後にした。


「クソッ!クソッ!クソッ!!」

苛立った隆夫は壁や床を殴りつけた。放っておけば部屋にある机やテレビさえ投げかねない勢いだ。

陸が慌ててなだめる。

「おい!落ち着けよ!悔しいのは同じだって」

「うぅ……、俺は、俺はなぁ。この島に賭けてたんだよぉ。うぐっ、うぐぅっ」

隆夫は泣いていた。いつも僕たちの前では強がって決して弱みを見せようとしないあの隆夫がガックリと膝をつき、ボロボロと流れる涙を隠す事無く泣いていたのだ。

こいつ、これほどまでにヤリたかったのか……。しかし、僕も陸も思いは同じだ。僕らは泣き続ける隆夫を何も言わず見守ることしか出来なかった。


「トイレ。行ってくる」

しばらく泣き、平静を取り戻した隆夫と陸に告げ、僕は部屋を出た。少し頭を冷やしたい。そして、これからどうするか考えよう。

僕はトイレで素早く事を済ませた。

さて、どうするか?

賢者モードとなった僕は、廊下の窓から外を見渡した。今は「みつこ」の二階にいる。ここからなら港の方まで良く見渡せる。

んっ?

僕は暗闇の中でチラチラと光る物を見つけた。松明だろうか?一瞬女の子がサプライズに来てくれたのかと思ったが、その思いはすぐに打ち消された。

その光は最初は遠くに一つだけであった。しかし、その数は一つ、また一つと増えていき、今はもう十以上に増えていった。どう考えても異様な光景だ。そして、僕は見た。

松明を持った人影がこちらに向かってくる。松明に照らされたその顔はまさしく鬼そのものだった。その歩みはそれ程遅くないが、あと五分もしないうちにここへ辿り着くだろう。

僕は部屋へ走り、二人に声を掛ける。

「おいっ!鬼が来た!早く逃げよう!!」

「はぁ?」

ポカンとする二人に窓の外を見る様に促す。只事ではない僕の慌てぶりに二人も事態の深刻さを分かってくれた様だ。素早くカーテンを開け、外を見る。

「なっ、なんだあれっ!」

「なんかヤバイ、ヤバイって!」

僕たちは荷物を持って間一髪、一階の玄関から外へ飛び出した。鬼はまだここまでは来ていない様だ。しかし、松明の炎は数十メートル先まで近づいている。僕たちは奴らに気づかれていない様に祈りながら山の方へと逃げ出した。

幸い月明かりのお陰で周りは良く見える。僕たちは少し走り、藪の中へと逃げ込んだ。

「どこいきやがった!」

「二班からは何も連絡がない!山だ!逃がすな!!」

男の声が遠くから聞こえる。鬼は僕たちがいないことに気づいた様だ。しかし、あの声は、人間?

「おいっ。アレって本当に鬼じゃないよな?いったい何なんだ?」

陸も同じ事を思ったらしく、声を潜めながら話し掛けてくる。

「あたり前だろ!しかし、どうなってるんだ?何でこんな事に」

「シッ!」

僕は二人の会話を制止する。

鬼が、僕たちの近くを通り過ぎようとしていた。

「いったい何処行ったんだ!絶対に逃がすなよ!ユキ!お前がしっかり見てないから……」

「ご、ゴメンなさい。優子さんもゴメンなさい」

「ユキのせいじゃないよ!今は彼らを探す事だけ考えよう!」

そう言いながら鬼たちは去って行った。


「優子ちゃん……なんで?」

「ユキちゃん……」


落胆する二人を他所に、僕は別の事を考えていた。

ネットで調べたこの島の伝説は昼に述べた通りだ。他の島の長たちが貢いだのは、宝と食糧と美しい女たちだった。少なくとも、最初に見たサイトにはそう書いてあった。

しかし、別のサイトには別の考察がなされていた。

長たちが貢いだのは、宝と「食糧」だけなのではないかと……。すなわち女たちは、食糧として献上されていたのではないかという可能性を示唆していた。

「人喰い鬼の末裔」

僕は恐ろしい想像をしていた。あの肉。みんなが美味い美味いと食べていたのは……。


確か、みつこは言っていた。

「昼に取れたばかりじゃから……」

「この肉は、マ……」

「マ…」ってなんだ?そんな動物がいただろうか?僕の頭には悪い想像しか浮かんでこない。


マ・サ・キ?正木さん?


ウッ……。僕は胃の奥からこみ上げてくる酸っぱいモノを絶えられず吐いた。その後はあの肉片を全て僕の身体から絞り出そうと吐いて吐いて吐き続けた。涙も込み上げてくる。


イッタイナゼコンナコトニ……



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