売春島へ行こう!
売春島。良く知られている三重県のW島以外にも日本各地に存在すると言われている。普通の人々が住む寂れた島に見えるが、島に住む人々を支えている主な産業は売春である。
「おい!売春島行こうぜ!」
隆夫が興奮気味に大学の学食に飛び込んできた。
食事をしていた陸と光一は食事を吹き出しそうになる。なにしろ、時刻は昼の一時。夏休みで少なくなったとはいえ、まだまだ学生が残っている。チラチラとこちらを見る視線が痛い。
「声がでかいよ。声が。」
陸が隆夫をたしなめる。お調子物の隆夫はいつもこうだ。陸は自分達の周りに女子が集まって来ないのは隆夫のせいだと思っていた。
「すまんすまん。でも、お前らも行きたいだろ?」
隆夫は少しトーンを落としてつづける。
「売春島って三重県のか?今はもうほとんどやってないって書いてあるぞ」
メガネを上げながら冷静に返すのは光一だ。声に出すより早く、手持ちのipadで調べている。
「ほら、ここに」
隆夫と陸はipadを覗き込む。そこにはW島へ行った人からの詳細なレポートが記されていた。どうやら、バブルの崩壊と共に客が激減し、今ではかなり寂れているということが書いてあった。
でもこいつ、知っていやがったな。陸は思ったが、口には出さなかった。
「バカ!三重県じゃねえよ。もっと近くにあるんだよ。亘先輩がこの前行ってきたんだってよ!」
三人のサークルの先輩だった亘先輩によると、それは静岡県のH島からさらに船を乗り継いだK島にあるということだ。一般には知られていないが、その島はある政治家の保護を受け、政治家や、官僚、会社の役員が多く利用していたため、かなり盛況だそうだ。しかし話を聞く限りでは、学生風情ではとても行けそうなところではない。
「それが、そうでもないんだよ。政権交代の結果、政治家関係の客が激減しているんだってよ。今は一見の客も大歓迎らしい。すげえ可愛い子がメチャいるらしいぜ!」
「でも、それにしてもかなり高いんだろ?」
興奮して話し続ける隆夫の話に陸が口を挟む。
「泊まりで6万。ショートで3万ってとこか?」
答えたのは隆夫ではなく光一だ。隆夫たちを見ることなく、何かのサイトをじっと見ている。
「おっ、おお。良く知ってるな。そのサイトに何か載ってたか?」
画面を覗き込もうとした隆夫からipadを隠しながら、光一は答えた。
「別に、そんな情報はない。政治家の相場、そして世間一般の相場を調べて予測しただけだ」
このムッツリ野郎!陸はそう思ったが、頭の中では預金の金額、もうすぐ入る今月のバイト料、生活費を差し引いた残りを計算するために頭をフル回転させていた。なにしろ、もうすぐ大学も卒業だというのに、三人ともアッチの方は卒業できていない。それに加えて「売春島」という淫靡な響き。心を引かれるのも無理はなかった。
九月の始めのまだ残暑も厳しい日が続く中、彼等は静岡県のとある駅に降り立った。ここから船で三十分ほど乗った先に中継地点となるH島がある。三人は無言で、スマホのゲームをしながらこれから起こるであろう未知の体験への期待に胸と股間を膨らませていた。