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2-13.オーソン村攻防記③

 俺が村に到着し、結界の作成に成功してしまった次の日、主なメンバーが招集されて会議を行った。村長、自警団団長(キャミルさん)自警団副団長(ロイスさん)、村の名士であり知恵者である薬師(ヤーゴンさん)、細工師のプリウムさん、自警団の団員からオリバー(おやっ)さん、そして結界の作り手として俺。

 俺にとっては、村長さんのみ初対面であった。村長さんは、王都から物資を持って駆け付けてきたと言うことで、俺にひたすらお礼を言ってきた。

 俺自身の手柄ではないので面映ゆい。

 話し合いのテーマは今後の対応である。と言っても、警備のプロである自警団が方針を打ち出し、他のメンバーが確認を入れていくだけの簡単な会議であった。

 具体的には、以下のような話をした。

  (1)結界の張り直し

  (2)村の警備体制

  (3)結界の外の警戒


 (1)結界の張り直しなどと言う大掛かりな話がどこから出てきたのかと言うと、魔獣の季節より以前からリスクとして認識されていたのだそうだ。

 結界は杭を中心に球形に一定の範囲に魔獣を寄せ付けない機能を持っている。弱い魔獣なら弾き返すこともできるらしい。

 村全体を覆うような大きい結界を設置するのは無理があるため、通常は、杭を等間隔に差し込んで村を囲っていく。

 費用が潤沢で結界の数が充分に確保できる場合は、杭の間隔を狭くし、結界を重ねるように壁を作ることができる。普通は、結界同士がぎりぎり重なるように配置する。オーソン村でも多分に漏れず、ぎりぎりを攻めているとのこと。ただ、村を拡大する度に結界を配置し直しているため、結界と結界に隙間があるんじゃないかと危惧されているらしい。

 普通、結界師と呼ばれる結界の魔道具を作ったり設置したりする人が村まで来て作業をする。

 オーソン村では、村を拡張する際に、たまに自分達で結界の位置を移動させているのだそうだ。

 結界の有効範囲だって、結界ごとに微妙に異なるのだ。物によっては、標準より範囲が狭いものもあるかもしれない。杭と杭の間は何メートルみたいに一律で、しかもギリギリの距離で設置してたら隙間だって空くだろう。

 今までは何もなかったが、最近の魔獣の季節はやたらと魔獣の数が多いようだ。隙間がないか確認しないと。

 と、言うことだ。

 当然、これは俺に割り振られた仕事となる。

 結界師(本当は自称・魔道具の研究家?)である俺に村の外周をぐるりと周ってもらい、結界に隙間があれば新しい結果を作って埋めて貰おうと思ったのだそうだ。

 俺がそんなことをして良いのかと言う話もあるが、結界を作った実績があるのだから腕は大丈夫だろうし、背に腹は代えられないのだと。

 会議が終わったら、さっそくパーン(新人君)と組んで回って欲しいと。

 なぜパーンかと言うと、主力は村の外への探索と、前回壊された結界の警備をするので新人しか回せないとのこと。新人の内ではパーンは俺と顔見知りだし、良いんじゃないかと。

 要は村の案内をしてもらうだけだから誰でも良いんだけどね。


 (2)村の警備体制については、俺には関係のない話となった。

 俺が作った結界は、一晩様子見たが今のところちゃんと動いているようだ。

 なので、今までよりは警備を緩くして良さそうだ。

 ただし、前回壊された時のように、村が魔獣の通り道にある可能性が残っている。

 けもの道は繰り返し動物(けもの)が通ったために道ができることを指す言葉だが、道が出来るほど動物がそこを通るには理由があると言うことだ。つまり、通りやすいと言う理由が。

 なので、引き続き、警備の重点箇所として人を配備していくとのこと。

 ここにも新人を多めに配備するらしい。

 村の中や出入り口の警備は、いままで通り村人が見回る程度にするそうだ。

 一番危険性が高いのは壊された結界の部分で自警団が、それ以外の危険性が低い場所は村人がと言う役割分担だ。

 今まで通りだったこともあり、特に異議も出ずに決定した。


 (3)結界の外の警戒だが、村長から一番突込みが入った議題だ。

 自警団としては、感覚的にいつもの魔獣の季節よりも魔獣の数が多いと感じている。

 実際、そうだと俺は知っているが、それを知る(すべ)は自警団にも村人にもない。

 それに、ヒロモンの世界全体で魔獣の総数が増えていたとして、オーソン村の周辺はどうだかは俺にも分からない。

 だから、自警団はそれを確認しに行くと言った。村の周辺には森林や低山も川もある。多種多様な魔獣が存在するが、どの種類がどれだけ増えているのか、村まで来る可能性があるのか、調べなければ分からない。

 まったくもっておっしゃる通りなのだが、偵察はとても危険な行為である。

 自警団では、副団長(ロイスさん)を始めとしたベテランの団員と村人から熟練の猟師でチームを組み、村からの距離にして1から2キロメートルくらいは確認すると言っている。

 村長さんとしては、村としての主力が村に居なくなるし、危険だし、専守防衛に徹してればそのうち魔獣の季節が終わると考えている。わざわざ(やぶ)をつつきに行くなんて馬鹿らしいと。

 結局のところは村長さんは自警団に押し切られてしまった。

 自警団いわく、魔獣の季節が終わっても、一度増えた魔獣が減るわけではないので、いつかは村の外へ行かなければならない、今なら結界師(俺のこと)の応援もあるのだから、今がチャンスである。

 切り札みたいに言われても、俺はとても困るんですが。


 こうして会議は終わり、ランチタイムとなった。

 ちなみに自警団本部で会議を行っため、噂の自警団コックの作ったランチとなった。

 食堂のいちテーブルを囲んでの食事だったが、山盛りのパンと寸胴ごと出てきた肉と野菜がごった煮になったスープだった。

 相変わらず味は分からないが、周りは美味そうに食べていたので美味いのだろう。肉体労働者(じけいだんいん)向けにボリュームは多いが、味も満足と言う至れり尽くせりだ。

 昼食が終ると会議はお開きになった。

 パーンを探さないとならないのかどうかと迷っていると、キャミルさんに呼び止められた。

 俺はキャミルさんの執務室についていく。

「ケージ殿、勝手に仕事を割り振ってしまった。事前に相談せずにすまなかった。」

 執務室のソファに座ると、キャミルさんは謝ってきた。

 最近、他人から謝られてばかりいる気がする。

 怒られるのは嫌いだが、謝られてばかりいると言うのも気持ち悪いものがある。

「別に良いですよ。俺もオーソン村に来た以上はできることをしたいと思いますから。」

「そう言って貰えると助かる。あと、報酬の件だが、どれくらい支払えば良いだろうか。」

「報酬、ですか。」

 まったくもって想定していなかった話題である。

「正直、規定の料金があるわけでもないですし、相場も分からないです。」

「ケージ殿は、何かのギルドには属していないのか。」

「ええ、どこにも属して居ないです。強いて言えば、幸運の光教団になりますね。」

「オーソン村からケージ殿へ支払わなければならない対価は大きいと考えているんだ。まずは馬車いっぱいの物資。次に物資を運搬してきてもらった費用。壊れた結界の修復費用。そして、今回の村全体の結界の確認と張り直しの費用。恐らく、物資だけでも金貨50枚以上にはなると見積もっている。」

 えっと、以前は銀貨1枚で2000円くらいと考えたんだったか。金貨は銀貨の100倍だから、物資だけで1000万円相当なわけか。ものすごく高いな。

 野犬の魔石がDランクで銀貨5枚くらい。今回の物資にはBランクの魔石も混じっていたよな。相場はいくらだ。分からないぞ。他にも食料とか武器とか、自分で買ったことないし。

「物資については、騎士団から贈られたものです。俺に支払われても困りますよ。物資の運搬も、ガルガンさんから依頼料をいただけることになっています。」

「そうか、ガルガンには礼を言わねばならんな。もし良ければその依頼書を見せてもらえないか。」

 見せて困るものではないので、素直に依頼書を渡す。

「ケージ殿。これは物資の運搬のみの依頼だよ。村での労働分は別途協議とある。」

 ああ、そうなのか。良く読んでいなかった。

 まあ、俺は会社でも契約とかに絡んでなかったからな、その辺の確認が甘かったのかもしれない。

「もちろん、村での働きについてはワタシから一筆書かせてもらうが、村からも感謝の意を示させて欲しい。」

 俺だってお金は欲しい。

 冒険者ギルドへの登録ができない以上、魔獣を倒してお金を稼ぐと言うRPG的なことは期待できない。

 そうすると、とたんに俺に稼ぐ手段がなくなってしまう。

 一方で、ここに来たのは知り合いを助けるためだ。その行為でお金を貰うと言うのも気分的に納得いかない。

 なので、俺は、お金を少額だけもらえるように説得こうしょうしようと考えた。

「確かに、王都から村に来て、滞在しているのですから、その分の手当てはいただけると助かります。ただ、俺は冒険者ギルドにも所属していない。ランクは最低ランクで考えられるんじゃないでしょうか。」

 物資は騎士団のものだとすると、俺にかかるのは人件費だけだ。人件費も、本来は技能によって高額になりかねないところだが、ギルドからランクを認定されていないことを理由に最低ランクでどうかと言ってみた。

 キャミルさんは、さすがに一呼吸おき、その間に俺の顔をじっと見つめていた。

「ありがとう。ケージ殿には村への滞在期間中の食事と住まいの提供、そして日当を支払わせてもらおう。」

 どうやら折れてくれたようだ。

「契約期間は、村の結界を一通り確認して、張り直すのが終わるまでですかね。」

「そうだな。一応、5日ごとに状況を確認させてくれ。」

「ええ、それで結構です。話はそれだけですか。」

「ああ、これだけだよ。」

 キャミルさんは苦笑いを浮かべている。

「オーソン村のような開拓村にとってはお金の問題が一番厄介なんだがな、それだけと言えばそれだけさ。」

 結界は高価だろうから、村全体を囲うとなると、返済期間は何十年単位なんだろう。その上、毎月のように保守料をふんだくられて、減価償却なんてあったものじゃない。

 収入を増やすために村を拡張しようとすると、新しく結界を買う必要が出てくる。

 商人は半永久的に自分の下で稼働する工場を手にしたようなものである。

 これを悪どいと非難するか、うまい仕組みだなと感心するか、人によって意見が分かれそうである。

「さて、報酬をいただけるとのことですので、働きに出ますかね。パーンはどこに居るかご存じですか。」

「ああ、パーンにはオリバーから話をさせているので、食堂に戻れば待機しているんじゃないかな。」

「分かりました。行ってみます。では、失礼します。」

 俺はキャミルさんの執務室から退出した。


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