表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴロツキ騎士団  作者: ころ太
第四章:風に吹かれて
59/62

風の先に

ラル視点です


 一枚のガラスが割れた事を切欠に、僕は次々と窓ガラスを割っていった。きっと発作が起きれば、シーナの行動を止められる。その考えしか思い浮かばなかった僕は、僕を止めに来たリジュ嬢を振り切りながら新鮮な空気を入れる為に割れたガラスの破片が僕の手や顔を傷つけて血を流させる事など気にしないまま行動してしまっていた。


「シーナ、シーナ・・・シーナ・・・!!!」


 ガラスを割る事に夢中になっていた僕が、意識を他に向けたのはクレスタ様の悲痛な叫び声だった。ボロボロの体を引きずりながら向かっていくクレスタ様の行き先は倒れたシーナの側だった。

 横たわるシーナの顔を泣きながら撫でて何度も何度も名前を呼んでいた。


「・・・シーナ、違う、君がこんな・・・お願いだ・・・死なないで・・・」


 瞳を閉じたシーナを抱きしめるクレスタ様を見て、初めて自分のしていた事に血の気が引いて、持っていた剣を思わず落としてしまった。床に落とした衝撃で鳴った金属音に反応したリジュ嬢が素早く僕の剣を拾って、ゆっくりとシーナとクレスタ様に近付いて行く。


「息の根を目の前で止めてやるわ・・・まさに手も足も出ない今の状況なら私にだって殺せる・・・!」

「っ、させません・・・!どうして、そこまでして・・・!」


 僕は慌ててリジュ嬢の手をとり、体を拘束した。


「黙れっ、何も知らないくせにっ!!!私が、どんな思いで故郷を失ったか知らないくせに!家族を失ったかしらないくせにっ!!!」


 暴れるリジュ嬢の家族、の言葉に僕も母と兄の姿を思い浮かべてしまった。その一瞬、拘束する力が弱り、リジュ嬢の剣を持っている腕が大きく動く。


「っ、」


 顔ぎりぎりに振るわれた剣先を偶然躱すと、拘束が外れてリジュ嬢がシーナとクレスタ様の方へ足を急がせる。慌てて止める為にリジュ嬢の腕を引っ張るが、慌てて引っ張った事で力加減が出来ず、バランスを崩したリジュ嬢が僕の方へと倒れ込んで来た。

 剣を握る手を取ろうと腕を伸ばすが、それよりも先にリジュ嬢が僕の腕を斬ろうと振った剣先を咄嗟の反応で避けることしか出来なかった。

  倒れ込んで来たリジュ嬢の先、僕の後ろが、大きく割られた窓だと忘れて。


「あ、ぶないっ!!」


 はずみで窓から外へと大きく沿ったリジュ嬢の体を戻そうともう一度腕を差し出すが、見えたリジュ嬢の瞳が示す感情はそれでも、拒絶だった。


「いやああああああああああああああああ!!!」


 僕の手は、リジュ嬢の振るった剣で少し斬られ、その細い腕をつかむことなく空気を握りリジュ嬢が窓から落ちていく様を見ていることしか出来なかった。


「・・・っそんな・・・!」


 急いで窓から下を確認するが、雨と暗さであまり下の方がはっきりと見えない。


「っ、シーナ!」


 入ってくる雨に濡れながら窓の外を確認していると、クレスタ様の声がまた聞こえる。振り返ると、クレスタ様が嬉しそうに笑っているので、きっとシーナは呼吸をし始めたのだろう。


「クレスタ様・・・シーナは、」


 声を掛けると、クレスタ様は泣きながらシーナの事を抱きしめなおしていた。


「まだわからないけれど、息はしてるよ。ありがとう、ラル君、ありがとう」


 涙を流すクレスタ様の表情は幸せそうで、本当に良かった、と心から感じながらも窓の外の雨を見るとどうすれば正解だったのか、と考えてしまった。

 きっとその答えは、直ぐには出ないのだと思う。


「・・・応援を呼びましょう。皆満身創痍です、それに僕・・・リジュ嬢の様子見てきます」

「・・・そうだね。・・・ラル君」


 僕は考えていた事が顔に出ていたのか、僕の顔を見ながらクレスタ様は複雑な顔をしていた。


「僕もね、わからないよ。僕は、リジュに関して何か言える事は無いけれど・・・それでも、シーナにしたこと、僕だって許せないんだ。正解か誤ちか、はっきりとわかれるものなんて、世の中には少ないものだよ」

「・・・・そうですね・・・。僕は、もっと物事とはきっちりわかれるものばかりだと・・・思っていました。リジュ嬢の事は・・・その、僕なりに考えていきたいと思います」

「・・・うん、僕達・・・皇族は、もっとリジュの様な人たちのこと・・・もっと考えていかなきゃいけないんだと思うよ。君のお兄さんと一緒に、また考えよう」

「・・・はい」


 その言葉だけを交わして、僕は飛竜に書状を持たせて王都へと伝を出し、リジュ嬢の様子を見る為にその場を離れた。




 

 数日後、連絡が伝わり到着した王都の軍によって、上手く隠されていた香失草の栽培場所や保管場所、また資料なども屋敷から発見され、王都で見つかった患者達も村の人達だと言うことがすぐに判明した。

 そして、末期患者以外は殺されていた事も同じく判明した。

 十三人の名前が書かれていた紙から線を引かれて消されていた名前は、本当にこの世からも消されてしまっていたのだと、屋敷の外に埋められていた遺体から確定し、嘆く村人も少なくはなかった。発見された遺体は男性ばかりで、香失草の効力が現れなかったのだと予測されている。


 それでも、様々な証拠が発見された事で事件はするすると解決を迎え、人が消える原因もわかった事で村の人達は安心し、末期患者達も回復へ向けて研究がすすめられていった。

 満身創痍だった騎士団やクレスタ様も医療施設での治療がすすめられ、僕もガラスを割った血だらけの腕や斬られた顔や手の治療をしながら、事件に付いての資料を纏めている。僕も治療室から出ていないので確認はしていないが、聞いた話によるとクレスタ様をはじめ、シーナ以外の騎士団は直ぐに意識を取り戻したそうだ。

 シーナは未だ眠り続けていると聞いている。


 目覚めてみないと香失草の効力が現れるかどうかはまだわからない。けれど、全体が少しずつ前へと進み、解決へと向かっていた。




 ただ一つ、消えたリジュ嬢の姿だけを除いて―――――





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ