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ゴロツキ騎士団  作者: ころ太
第二章 不穏な風
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「マロン、どうだった」


 丁度村の半分に来たところで、マロンとヴィスタと遭遇出来た。二人もさして疲れた様子も無く、マロンだけが怪訝そうに眉を歪めている。そろそろ日も落ちて、暗くなるだろうと予測した私達は、屋敷へとそのまま帰る事にした。マロンと先頭を歩きながら、集めた情報を交換し合う。


「特に問題は無かった・・・が、妙な物がいくつかあった」


 マロンの話によると、私達が見つけた火を炊いているだけの場所、炊いた後の場所が2,3個あったらしい。同じように違和感を感じたマロンが、顎を掴んで考えていた。


「まるで、俺たちに“誰か”が居た、と知らせたい様だったな。それも、見落とす事が無い様に幾つもだ・・・妙としか思えん」


 考え続けるマロンに私はある可能性の名前を口にしてみる。


「・・・・昨日、賊がいるかもしれないって言ったの・・・・オーリンに・・だよな」


 私から出てきた名前に驚いたマロンは、一瞬だけ目を見開いたが何事もなかったかの様に視線を前に向け直してくれた。


「・・・確かにそうだが・・・。準備が良過ぎないか? 昨日の今日だろう」


 言いたいことが伝わったらしい、鵜呑みにするわけでもなく冷静に解釈してくれるのは助かる。


「酒場にリジュを迎えに来ただろ? ・・・あの買い物って言ってた袋が、燃やす道具ってのも考えられる・・・。昨日、オーリンが私達を部屋へ連れていった後屋敷から出ていくのを見たんだ」

「・・・・屋敷から・・・か。それは一理はありそうだな」


 納得を示したマロンが思案しながら頷いた。ゆっくりと歩きながらマロンは屋敷に着く前に明日の提案をしてきた。


「・・・少し気は引けるが・・・屋敷を調べてみるか。村の事も詳しそうだったからな、何かしら資料が置いてあるかもしれない」


 頭の回転が早いマロンに私も首を縦に振った。


「やってみる価値はありそうだ。マロンが調べるか?資料なんかは、マロンが詳しいだろ?」

「いや・・・部屋へはシーナが行け。体も小さいし、万が一誰かと出くわしそうになっても隠れる事が出来る。俺達はオーリンに村の周辺を案内してもらうとしよう。その間に上手くやってくれ」


 起点が効くマロンが行くのがいいんじゃないか、とも思ったが確かにマロン程の男が本棚の間に隠れるとなると一苦労だ。マロンの指示に納得を示す。


「あぁ、わかった。助かる、そっちも上手くやれよ」

「この事は俺がまた全員に伝えておく。・・・今度は騎士団以外他言無用でな」


 フッと溜息と同時に漏らした最後の言葉は、オーリンを疑う事に少しばかりショックもあるのだろう。私たちの事を良くしてくれていたし、何より誰かを騙す様な人間には見えなかった。きっと騎士団の誰もが、同じ苦い思いをすると言えるだろう。

 話が一段落し、屋敷までの間特に会話も無く進んで行けば、後ろからポスンッと軽い衝撃を受けた。後ろにいたヴィスタが私の背中にピタリとくっついてきた様だ。何だ、と思えば鼻をすんすんと動かしながら匂いを嗅いでいる。


「何やってんだ、ヴィスタ。何か臭うか?」


 鼻を寄せてくるヴィスタを不思議に思いながら自分の腕を嗅いで見るが、特に気になる臭いはしない。


「甘い匂いがする。とっても甘いやつ」


(・・・・?・・・あぁ、昨日の花か・・・)


 甘い、と聞いて思い出したのは、一輪だけあったあの妙に香る花。


「移ったんだろう、結構な匂いが部屋中に溜まってたからな」


 水場に花を移したにも関わらず、私自身に匂いが染み付いていたとは思わなかった。そう思いながら再び自分の手を嗅いでいるとヴィスタがジッとこちらをみながら首をかしげていた。


「部屋に匂いなんかあった?特に何も匂わなかったけど。・・・そういえば、オーリンも同じ匂いがしたね」


 部屋にあった一輪の花からすごい匂いがしたと思っていたのだが、それは勘違いだったのだろうか。隣で話を聞いていたマロンを見て、確認してみることにする。


「部屋に、花が置いてなかったか?それの匂いだと思ったんだが・・・」

「あぁ、花は置いてあったな。・・・何も匂いがしなかったが・・・・シーナの部屋にあったのとは違ったのかもしれないな」


 ヴィスタに聞いても同じだった。悶々と考えていれば、後ろからアクリアとラルもやってくる。


「何、なんの話してんのー?」


 ぐーっと背伸びをしながら声をかけてきたアクリアにも同じ事を聞いてみたが、どうやら内容は同じらしい。


「花?あぁ、あったね。一輪だけさ、何か一輪ってとこがまたお洒落だよなぁ。でも甘ったるい匂いなんてしなかったぜ。」

「無臭に近い珍しい花だと思いましたね・・・。どこかで見たような花だったのですが、思い出せませんでした」


 ついでに聞いていたラルも答えてくれたが、私の思っていた様な匂いはしていなかったらしい。見た目はその辺の花と似ているのに・・・と思ったが、あの色、そしてあの形の花は似ていても、今日行った森や村では見かけなかった。屋敷にも無かった様に思ったがオーリンはどこからあの花を持ってきたのだろう。

 オーリンへの疑問は深まっていくばかりで、何の解決の緒も見当たらない。


(悩んでばっかだな・・・)


 ため息に少しだけ疲労感を付け足し、吐き出した所で私達はやっと屋敷へとたどり着いた。














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