模索と予定
大きな部屋に着けばさっそくオーリンは屋敷の地図と村の地図を用意し、村で起きている事を説明をしてくれた。
「村では13人の方々が居なくなっております。居なくなった場所ですが・・・目撃がありませんので、予測しか出来ておりません。印を付けてみましたが、共通点と言えば人通りが少ない・・・という事くらいでしょうか」
丸い机に騎士団とオーリン全員が腰掛て、一枚の地図を囲む。それに記された×の印が居なくなったと思われる場所だろう。確かに、その印はバラバラに付けられていた。
「居なくなった方々の共通点も特にはありません。女性が8名と男性が5名。子供からお年寄りの方までいらっしゃいます。皆様、普通の生活の間に突然帰って来なくなったと伺っております」
オーリンの言葉に地図を見ながら考えるが、本当に何もわからない。
(どうしたもんかな・・・・)
糸口さえ見つからないこの事件をどうやって探るか、と思案していればラルが不思議そうに疑問を告げた。
「あまり大きな村ではないのに・・・・これだけの人が居なくなって目撃がない、というのも不思議ですね・・・・。本当に神隠しの様です」
「えぇ、そうなのです。目撃も・・・原因もわからないので、村中、気味が悪いと恐れています。居なくなった方々のご家族も、日々不安に駆られてるでしょう。・・・あぁ、すみません。私としたことが、直ぐにお茶をご用意させていただきますね」
そう言って思い立ったようにオーリンが立ち上がり、部屋に付いているキッチンへと向かって行った。それを見送って、マロンに一声かけてみる。
「・・・・マロン、どうだ。何かわからねぇか」
顎に手を置いて考えているマロンは渋るように声を出して、考えを告げた。
「・・・・・これだけ目撃が無い、尚且つ原因も見当たらない・・・・か。村の周りを確認して見たほうがいいな。賊が潜んでる可能性もある、人質や身売り、奴隷に関与している場合もありえる」
本当によく頭の回る奴だな、と関心しながら聞いていれば周りの騎士団も同じように頷いて聞いていた。それを確認して私は地図へバンッと掌を置いた。
「よし・・・周りを捜索するぞ。ただし絶対一人になるな、ミイラ取りがミイラになっちまったら意味がねぇからな」
マロンの仮説から調べて行くしか道はない。例え違っていても、そこから何かつかめることもあるかもしれない。
「どうやってわけますか?2人と3人という事になりますが・・・」
ラルも賛成の様で、いつもみたいに文句を漏らさず積極的に動いてくれる様だ。
「そうだな・・・ラルには教える事もある、私と一緒でいいか?」
「はい、お願いします」
反論してくるか、と思ったが素直に言うことを聞けば本当にコイツは犬みたいに従順な奴だ。
「俺もー!俺もシーナと一緒がいい!」
後はどうするか、と思えばアクリアが手をぶんぶんと大きく振り上げて主張してくれた。そのやる気に満ち溢れた姿に少し笑いを漏らして、このチーム分けは終を迎える。
「やる気だな、アクリア。よし、じゃあマロンとヴィスタで回ってくれるか?マロンがいれば大丈夫だとは思うが・・・ヴィスタ、絶対に一人になるなよ」
マロンは腕っ節の実力も、行動力も、そして判断力も頼りになる。マロンが居て大失敗はまずないだろう。ヴィスタに約束事の様に聞かせれば、しっかりと頷いていた。
そこに、熱いお茶を持ったオーリンが帰ってくる。
「おや、もうお話は纏まったのですか?」
ひとりひとりの前に湯気の立つお茶と焼き菓子を置いて行きながら聞いてくるオーリンは、少し驚いているようだ。
「あぁ、賊の可能性を見て・・・周囲を捜索してみる。物騒な奴とかは見てないか?」
村の内容を詳しく知ってそうなオーリンに声をかければ、記憶を辿りながら宙を見て考えていた。少しして、オーリンは小さく首を横に振る。
「いいえ、申し訳ありませんが・・・村の者達以外は見かけておりません」
「そうか・・・・まぁ、目撃もないしな・・・当たり前かも知れねぇ」
期待しまった気持ちを落ち着ける為に溜息をつけば、オーリンが申し訳なさそうな顔をしてしまう。その顔に謝ろうと思ったがオーリンは再びにこやかに笑って、これからの事を提案してくれた。
「今日はそろそろ日が傾いて参りますし、お部屋でゆっくりされた後、言われていた酒場に行かれるのはいかがですか?周囲の捜索は明日にした方がよろしいかと・・・・この辺りは山も近いですから、野生の生き物も稀に降りて来ます。夜に村の外へ出歩かれるのは、御薦めできません。」
それを聞いて一番に反応を示すのはやっぱりアクリア。
「やった!そうしようぜ、シーナ!今日は移動も結構時間かかったしさ!」
酒場に早く行きたいだけだろう、と突っ込もうとも思ったがラルも初めての遠出だし、皆それなりに疲れているのは事実だ。オーリンの言ってくれた案に賛成を示してお茶を一口すすった。
「そうだな。時間に限りがあるわけでもねぇし・・・今日はゆっくりするか」
よっしゃぁ!!っと声を上げて喜んだアクリアに私は笑い、隣のラルは酒場に興味を示し、ヴィスタは自分の焼き菓子を食べ終え、気が散ってるアクリアの分を口いっぱい美味そうに頬張って、そんな光景にマロンがまたも顔を緩ませる。
そんな光景に、私の顔も緩みきっていた。




