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ゴロツキ騎士団  作者: ころ太
第二章 不穏な風
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「任務だ!!!」


 ドカッと勢い良く開いて少し外れそうになる屯所の扉を慌てて抑えれば、中に居た奴らも驚いていた。


「任務!?どこどこ!!女の子居るとこッ!?」


 一番に目を輝かせたのはアクリアだ。アクリアはいつも外に出ることを喜んでるし、騎士、と名乗れば女達が寄ってくるのをよく知っている。


「村だ、女も居れば酒場もある。そうだな、焼き菓子なんかも名物だと書いてあったぞ、ヴィスタ」


 少し面倒そうに顰めっ面をしていたヴィスタに言えば、アクリアと同じように目を輝かせてくれる。好きなものがわかりやすい奴等を動かすのは簡単だ。


「それっ!!本当!?いつ、いつ行くの!?僕はもう直ぐにだって準備出来るよ!」


 そそくさと支度を始めたヴィスタとアクリアは放っておいて、マロンへクレスタから受け取った書類を手渡す。念入りにチェックをする横で、ラルも真剣に書類を眺めていた。


「遠いな・・・出発はいつだ?手段はもう決まってるのか?」


 ペラペラと紙を捲りながら訪ねてくる質問に、私もマロンの向かいにテーブルを挟んで腰掛け、頬杖をついた。


「出発は明日。乗り物は飛竜だ、5匹頼んでる」


 手を開き指の数で5の数字を表せば、マロンは頷き、隣にいたラルは不思議そうな顔をする。


「飛竜?乗ることが・・・出来るのですか?」


 いつもより大きめに開いた瞳が、驚いているとわかった。


「なんだ、乗ったことねぇのか?」


 頭も良く普段は大人しい生き物の飛竜は任務や旅、とにかく早い時間で遠出する時に便利だと好まれている。


「シーナ、ラルは恐らく・・・乗ったことはない」


その言葉に、ラルの出身を思い出した。確かに、飛竜の飛行は安定している訳でも安全と保証があるわけでもない。そんな乗り物に、皇族や貴族の様なお高く纏まってる奴等が乗り込むはずはないだろう。


(皇族っつーのは本当に面倒な一族だな・・・使えるもんも使わねぇとは・・)


 面倒だ、と思いながらも初めてでは仕方がない。解りやすくゆっくり説明してやることにする。


「ラル、飛竜は見たことあるだろ?山とか草原とかで空飛んでるトカゲみたいな奴だ。操縦は簡単だぞ。背に乗っかって軽く腹を蹴ってやれば自然と体を浮かせるから、首を持って・・・・後は適当に、だ。まぁどうにかなるだろ」

「・・・・・は?」


 私の説明では理解できなかったらしい、ぽかんと口を開けたラルにマロンが付け足した。


「飛竜は移動に時間もかからず便利なんだ。操縦ができなくてもアイツ等は頭が良いからな、群れを為せば自然と先頭に付いていくから心配するな。それに・・・・その、捕まってれば落ちる事はないと思う・・・」


 言葉を濁したマロンに、ラルはぴくりと眉を動かす。


「お、落ちる心配もあるって事ですか!もしや今までこんな無茶な移動を!?」


わなわなと手を震わせているラルはきっと怒りメーターが沸々と上がってきているのだろう。


「無茶じゃねぇよ。いい機会だ、何事も経験だろ?」


 極端に経験が少ないラルは、ぐっと押し黙り考え混んでいた。そんなラルを見て、準備をしっかりと終えたアクリアが再び悪戯を言い始める。


「ラル、怖いんだろ~?いいぜ、坊っちゃんはここに残っててもよ」


 そしてそれに便乗するのはもちろんヴィスタ。


「そうそう、新入りちゃんに飛竜は荷が重いんじゃない?」


口元を緩めた二人に挑発されるのは果たして純粋なのかただの馬鹿なのか。


「そんな訳ないでしょうっ!!出来ますよ、空を飛ぶくらいっ!」


言い争いを始めた三人を遠目で見ながらフッとため息が漏れた。


(あぁーあ。コイツも簡単だなぁ・・・)


呆れた顔でチラリとマロンを見れば嬉しそうに、そして穏やかに笑っていた。


「・・・・マロン、顔が緩んでるぞ」

「はは、何だか・・・・楽しそうでな。こんな光景は久しぶりだ」


 笑いながら書類を綺麗に纏め直したマロンは、行くこと自体に異論はないのだろう。すっと一枚の書類を机に置いて任務の話をする時には、真剣な顔に戻っていた。


「ところでシーナ。今回の任務だが・・・・少し不可解なところが多過ぎないか」


 普段とは明らかに違う内容に、マロンも気づいたのだろう。


「あぁ、今回は気が抜けない。・・・行方不明者が13名、誰一人見つかってないし、情報も全く無い。向こうで聞き込んで原因を探るしかねぇな。まぁ、今回は原因を探るまでが任務だ。ラルも初任務だし、無茶をするつもりはない」


「なるほどな・・・確かに軍で調査すれば大っぴらになるからな・・・やりにくいのかもしれん。まぁ・・・現場に行かなければ、今回ばかりはわからないか」

「そうだな。久々の任務ってのもあるし、まぁ・・・色々と楽しもうぜ、マロン」


 心配するのはマロンの癖だが、マロンにも息抜きくらいして欲しいと思っている。私の言葉を理解してくれたのか、マロンも少しだけ肩の力を抜いてくれた。


「わかった・・・。今のところは、明日の空の旅を楽しみにするとしよう」


 話を一段落終えたところで、騒いでいた三人も収集がついたらしい、肩で息をするほど言い争った結果、疲れすぎてぐったりとしてしまっている。

 それにまたマロンと二人で笑って、明日へと備える事にした・・・











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