皇族の男、過ちを知る。
ラル視点です。
団長が倒れてしまった瞬間、騎士団の面々はすごい勢いで走り出した。僕は、未だに驚きなのか、感動なのか、喜びなのかわからない震えで手足を動かす事が出来ず、呆然とその現場を見ていることしか出来なかった。連れて行かれた団長にアクリアとヴィスタが付き添い、マロンだけがこちらへと戻ってくる。
「どうだ、ラル。・・・・驚いたか?」
先程と同じように横へ座り、僕へと問いかけてきたその言葉に・・・・僕は自分の中を必死に整理させた。
「・・・・驚いて・・います」
「はは。まぁ、そりゃあそうだろうな。これで、シーナに対する意識・・・騎士団に対する意識が、少しでも変わってくれると・・・ありがたいんだがな」
マロンは笑っているつもりなのだろうが、少し眉を寄せたその顔は苦笑いとも受け取れた。
「最初に言ったろう?騎士団の活動が猶予ってな。だが・・・ここはシーナにとっても、俺たち騎士団にとっても・・・・クレスタの野郎にとってもな、大事な場所なんだ」
目元を緩めたマロンに、僕は自分が最初に言っていた事すら忘れていたのを思い出す。最近はもっと強くなりたい、とばかり思っていたから。
それは、軍にいた時よりも強く、強く願うようになっていた。
「皇族の権力を持つラルが騎士団を消すのは簡単な事なんだろう。でも、ここで学べるもんは、まだまだあると思わねぇか?消すのは、もったいないと思わねぇか・・・?」
マロンの問いかけは、僕のぐちゃぐちゃになった頭の中の大事な部分を鷲掴んでくれた、そんな気がする。
学びたい。
もっともっと、団長の側にいればきっともっと強くなれる。いや、強くなるだけじゃない。
この興奮が、他に何も見えなくなる程魅了してしまうこの戦いが、
また味わえる・・!!
(団長に・・ついて、いきたい・・。・・・・・これがヴィスタの言っていた全身で味わう興奮・・・確かに、これは忘れらないな)
未だに手が震え、心臓はバクバクと大きく荒立っている。こんな経験は、したことがない。クレスタ様と剣を合わせた時だって、ここまで震えなかった。
「・・・・期限付きでは・・・・足りません」
僕の言葉にぽかんとしたマロンだが、僕は自分の思いを告げるだけで精一杯だった。
「もっと・・・もっともっと強くなりたい。団長の側にいれば、そう・・なれる気がします。マロン、貴方が言うようにまだまだ僕には学ぶ事がある様です」
ぐっと拳にやっと思いで力が入り、勢い良く立ち上がった。
団長にも伝えなければ。
「ラル・・。シーナが目を覚ましたら、一番に言ってやってくれ。きっと喜ぶ」
そう言ったマロンの方が嬉しそうに笑う。その笑みが、まるで反発息子が改心したような安堵感を醸し出すものだから、僕は何故か気恥づかしい気持ちになってしまった。そこまで思考がたどり着いて、はた、と気がつく。
(反発・・息子。)
思われていてもおかしく無い程、確かに僕は反発していた。
(・・・・団長という人への態度とは思えない程・・僕は・・・)
許して貰えればいいのだが、団長には呆れられもしたし最初など殺気を向けられたりもした。
(・・・自業自得ですね。けれど、諦めたりなどは・・・・したくない)
しっかりと気持ちを入れ替えて、伝えようと思った時にはもう、団長を女性だから、という偏見な見方ではなく一人の人間として、尊敬の念を抱いていたのだと思う。




