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ゴロツキ騎士団  作者: ころ太
第一章:新しい風
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団長、友人の企みを知る。



 クレスタをフィールドの外に出せば、現れた救護隊の奴らに運ばれていった。そして、クレスタが居なくなった事でこの大会のルールを思い出す。


(決勝は勝ち抜きだったか・・・・)


 思ったところで、足を返してフィールドへ上がった。


「時間を取らせて悪かったな。次の奴等、上がって来いよ」


 カキン、と剣を持ち上げて肩にかけ、人が上がってくるのを待つが一向に誰も上がってこない。


「・・・?」


 この場になって照れ屋か?と不思議に思いながらも、感覚を鈍らせないように、ブンッ、と剣を振り、体の感覚を戦いに取り戻すと同時に「ひッ!」という恐怖じみた声まで上がる。フィールドからスッと辺の人間が離れたが、一人だけ、カツンと鎧を鳴らしてやっと上がってきた。


 体力が残ってる内に戦いたかった男だ。順番に感謝しよう。


「・・・・・・リリア。お前が二番手なのか・・・中々手強いが、優勝の為だ。ここで負けたらクレスタに勝った意味がねぇ」


 他のチームの奴等は上がって来ないが、このまま待っていれば時間が経ってしまうばかりだ。緊迫した気持ちでこちらも準備するが、リリアは構えるどころか剣を抜きもしない。不思議に思って問おうとすると、はぁ、と息を漏らされてしまった。


「真っ直ぐにお話してくださる事、確かに尊敬していると言いましたがね・・・・状況を考えてください。こんな状況で大会が進むはずないでしょう。ここには温室育ちの方々もいらっしゃるんですから、あまり怯えさせないでください」

「・・わ・・・悪い」


 いつぞやのクレスタとの執務室を思い出すような会話の流れに、冷やりと汗が流れる。口で言われると、何故かわからないがリリアには絶対逆らえない。


「この大会は満場一致で騎士団チームの勝利でしょう。予選の成績、そして何より世界の鬼才、軍の異常者とまで呼ばれているクレスタ様を負かせてしまったのですから。・・・・私としても手負いの貴女と殺りあって負けるより、本気の貴女で負ける方が本意ですから。・・・・・ということで、お開きですよ。」

「は?負けねぇかもしれねぇだろ。っていうか・・え、勝ちなのか?」


 私の疑問に答える様に、リリアはアナウンスへチラリと視線を移すとアナウンスは慌てて言葉にする。


〔ま、まさかのクレスタ様敗退により、騎士団チームの優勝です!〕


 それを否定するでもなく、野次を飛ばすでもなく、会場の奴らは戸惑いはしていたものの再び拍手してくれた。それに、嬉しさが沸き上がる。

 この大会で、昔を思い出したり、嬉しさを感じたりと、私はいいことだらけだ。そんな私の感情を読み取ったのか、リリアは眼鏡を直して、クレスタの思いを口にした。


「・・・シーナ様、クレスタ様の執務室で伺いましたよね。・・・・この大会の目的を。・・・クレスタ様の狙い、恐らくは“この現状”ですよ。あの人は言いませんでしたけど、貴女を周りに認めさせたい、それがこの大会で叶えたい願いだったと思います」


 そう笑ったリリアに、悲しそうな顔をしたクレスタが思い出された。


「勝てば尚更。負けても、クレスタ様と対等に剣を交えるのは中々出来ることじゃありません。・・・どうかその思い、汲み取ってあげてくださいね」


 リリアの言葉が、どんどん私を後悔させていく。

 どうして、素直に喜んでやれなかったのか。・・・・・自ら否定してしまった。


(悪いこと・・・したな・・)


 自分はあれだけ諦めて、拗ねて、否定したのに、クレスタは何一つ諦めていなかったのだ。冗談とばかりに誘っていた軍の復帰も、共に仕事をするという夢も。周りに認められたいという気持ちも。


「・・・・後で、会いに行く。」


 数年前起こった事への憎悪や哀愁は消えない。だが、その思いを遥かに超えて、今はこの嬉しさと感謝をクレスタへ伝えたいと思った。


「えぇ、大歓迎ですよ。ですけど、あまり興奮させないでくださいね。・・・・・それから、貴女も十分養生なさってください。恐らく、鎧の下・・腫れ上がってますよ。」


 言葉にされた瞬間、一気に激痛が体を走った。背中と腹が、ズキズキと痛み始め、動悸までもが荒くなる。リリアの言葉で気が緩んだのだろう、人間の体とは不思議だ。

 ボケっと立っていれば、ついには視界までもが歪み始めてきた。リリアに伝えようと、口を動かすが中々上手く動かなくなっている。


「・・・・リ、リア・・・私に、も・・・救護・・・・」


 しかし有能なリリアはそれで理解してくれたらしい。


「はい。わかってますよ、だから言ったでしょう。・・・え、シーナ様!?ちょ・・救護隊!!急いで上がって来なさいっ!!!!」


 リリアの焦る声と同時に、遠くで騎士団の面々の声が聞こえた様な気がして心配症な彼らの顔を浮かべた私は顔を緩ませながら意識を途切れさせた・・・・・







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