さんとうぶん
ひとりぼっちの闇に、埋められそうになったら
いつも私は、“さんとうぶん”の儀式をする。
つやつやと光った金の塊に
想像のナイフを入れる。
ゆっくりと、ね、ゆっくりと
注意深く、みっつに切り分ける。
非情に正確に切り分けても
きっかり“さんとうぶん”にはできない。
最後に残る、原子がひとつ。
その子は、たぶん、
およそさんぶんのいちの、塊のはしっこでいる。
ひっそりと息をつめ、私を見つめている。
私はまた、およそさんぶんのいちの塊と、
ひとつの原子をぐちゃぐちゃと手でまるめて
もとにもどす。