表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/25

ー第3節 百花園の宴での対決。嫌がらせの主犯格・周妃の挑発を、李花は月餅片手に華麗にスルー

第3節 百花園の宴での対決。嫌がらせの主犯格・周妃の挑発を、李花は月餅片手に華麗にスルー


 そして迎えた「百花園の宴」。

 皇帝の主催するこの茶会には、主要な妃たちが一堂に会する。

 美しく着飾った女たちが、扇子の影で笑みを交わしつつ、互いの粗を探し合う戦場だ。


 その中心にいたのは、妖艶な美貌を誇る周妃しゅうひだった。

 彼女こそが、後宮で最も強い勢力を持ち、今回の衣装切り裂き事件の黒幕でもある。

 周妃は、入り口の方をちらちらと見ていた。

 (ふん、あの田舎娘。着ていく服がなくて、欠席するか、あるいはみっともない格好で現れて恥をかくか……どちらにせよ楽しみだわ)


 しかし、現れた李花の姿を見て、周妃は扇子を落としそうになった。


「ごきげんよう、皆様」


 李花は、にこやかに現れた。

 身にまとっているのは、あの切り裂かれたはずの桃色の衣装だ。

 だが、その裂け目は、金糸と銀糸を使った見事な刺繍によって修復されていた。

 裂け目がまるで雲海のように見え、その間を鳥が飛ぶようなデザインになっている。

 それは傷跡ではなく、むしろ衣装の格を上げる「芸術」へと昇華されていた。


「まあ、なんて斬新な意匠なの!」

「素敵だわ、どこの職人の手によるもの?」


 周囲の妃たちから感嘆の声が上がる。

 李花は「お恥ずかしい限りです」と謙遜しながらも、堂々としていた。

 

 周妃は顔を真っ赤にして、李花に歩み寄った。

「李花さん、随分と……変わった衣装ね。まるで、継ぎ接ぎだらけの襤褸ぼろみたい」

 あからさまな侮蔑の言葉。会場が静まり返る。


 だが、李花は怒るどころか、キョトンとした顔で周妃を見た。

 その手には、いつの間にか卓上の菓子――桃饅頭が握られている。


「あら、周妃様。このお饅頭、皮がもちもちで絶品ですわよ。一ついかが?」

「は……?」

「衣装のことですか? ええ、少々風通しが良すぎたので、少し手を加えましたの。形あるものは変化するものですから。それより、温かいうちに食べないと味が落ちてしまいますわ」


 李花は幸せそうに饅頭を頬張った。

 周妃の嫌味など、春の風のように右から左へ受け流している。

 いや、そもそも「嫌味」として認識していないのかもしれない。

 彼女の関心は、目の前の美女よりも、手の中の饅頭に完全に向けられていた。


「あなた……私を馬鹿にしているの!?」


 周妃の声が裏返る。

 無視されること、それは攻撃されることよりも屈辱的だ。

 周妃の背後に、黒く濁ったもやが立ち上り始めた。

 嫉妬、怒り、プライド、焦り。

 それらが混ざり合った、濃厚な負の感情。


 李花の袖の中で、おつまみがゴクリと喉を鳴らした。

『……来た。これぞ極上のフルコースじゃ!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ