ー第3節 百花園の宴での対決。嫌がらせの主犯格・周妃の挑発を、李花は月餅片手に華麗にスルー
第3節 百花園の宴での対決。嫌がらせの主犯格・周妃の挑発を、李花は月餅片手に華麗にスルー
そして迎えた「百花園の宴」。
皇帝の主催するこの茶会には、主要な妃たちが一堂に会する。
美しく着飾った女たちが、扇子の影で笑みを交わしつつ、互いの粗を探し合う戦場だ。
その中心にいたのは、妖艶な美貌を誇る周妃だった。
彼女こそが、後宮で最も強い勢力を持ち、今回の衣装切り裂き事件の黒幕でもある。
周妃は、入り口の方をちらちらと見ていた。
(ふん、あの田舎娘。着ていく服がなくて、欠席するか、あるいはみっともない格好で現れて恥をかくか……どちらにせよ楽しみだわ)
しかし、現れた李花の姿を見て、周妃は扇子を落としそうになった。
「ごきげんよう、皆様」
李花は、にこやかに現れた。
身にまとっているのは、あの切り裂かれたはずの桃色の衣装だ。
だが、その裂け目は、金糸と銀糸を使った見事な刺繍によって修復されていた。
裂け目がまるで雲海のように見え、その間を鳥が飛ぶようなデザインになっている。
それは傷跡ではなく、むしろ衣装の格を上げる「芸術」へと昇華されていた。
「まあ、なんて斬新な意匠なの!」
「素敵だわ、どこの職人の手によるもの?」
周囲の妃たちから感嘆の声が上がる。
李花は「お恥ずかしい限りです」と謙遜しながらも、堂々としていた。
周妃は顔を真っ赤にして、李花に歩み寄った。
「李花さん、随分と……変わった衣装ね。まるで、継ぎ接ぎだらけの襤褸みたい」
あからさまな侮蔑の言葉。会場が静まり返る。
だが、李花は怒るどころか、キョトンとした顔で周妃を見た。
その手には、いつの間にか卓上の菓子――桃饅頭が握られている。
「あら、周妃様。このお饅頭、皮がもちもちで絶品ですわよ。一ついかが?」
「は……?」
「衣装のことですか? ええ、少々風通しが良すぎたので、少し手を加えましたの。形あるものは変化するものですから。それより、温かいうちに食べないと味が落ちてしまいますわ」
李花は幸せそうに饅頭を頬張った。
周妃の嫌味など、春の風のように右から左へ受け流している。
いや、そもそも「嫌味」として認識していないのかもしれない。
彼女の関心は、目の前の美女よりも、手の中の饅頭に完全に向けられていた。
「あなた……私を馬鹿にしているの!?」
周妃の声が裏返る。
無視されること、それは攻撃されることよりも屈辱的だ。
周妃の背後に、黒く濁った靄が立ち上り始めた。
嫉妬、怒り、プライド、焦り。
それらが混ざり合った、濃厚な負の感情。
李花の袖の中で、おつまみがゴクリと喉を鳴らした。
『……来た。これぞ極上のフルコースじゃ!』




