ー第4節 自滅する黒幕と神の視点。すべてを見透かしていたかのような李花の沈黙と衝撃の結末
第4節 自滅する黒幕と神の視点。すべてを見透かしていたかのような李花の沈黙と衝撃の結末
王宰相の演説は続いた。
止まらない。止められない。脳内の快楽物質が暴走し、自分が世界の王になったかのような幻覚を見ているのだ。
「ひれ伏せ! 私は神だ! この国のすべては私のものだ!」
もはや、弁解の余地はなかった。
御簾が激しく開かれ、蒼龍が姿を現した。
その顔は氷のように冷たく、しかし瞳には激しい怒りの炎が宿っていた。
「……よくぞ申した、王徳」
「お、おお、蒼龍か! そこをどけ! その席は私が座るべき場所だ!」
完全に錯乱している。
蒼龍は静かに手を挙げた。
「捕らえよ。大逆罪である」
呆気にとられていた兵士たちが、我に返って一斉に宰相に飛びかかった。
「無礼者! 離せ! 私は神だぞー!」
断末魔のような叫び声を上げながら、王宰相は引きずられていった。
あまりに呆気ない、自滅による幕切れだった。
静まり返る審問所。
全員の視線が、部屋の中央に座り続ける李花に注がれた。
彼女は、宰相が狂乱している間も、一歩も動かず、表情一つ変えなかった。
ただ静かに、哀れなものを見るような目で、王宰相を見送っていただけだ。
人々には、その姿がどう映ったか。
「彼女は知っていたのだ」と、誰かが囁いた。
「宰相の悪事も、その破滅も、すべてお見通しだったのだ」
「だからこそ、反論も抵抗もしなかった。天罰が下ることを知っていたから」
蒼龍が李花の前に歩み寄った。
彼もまた、驚きを隠せない様子で李花を見下ろした。
「……李花。お前は、こうなることが分かっていたのか?」
李花は顔を上げ、きょとんとした。
彼女の頭の中では(あーあ、おつまみがまた食べ過ぎちゃった。今夜の夕食は消化に良いものにしないと)という現実的な心配が渦巻いていたのだが、口に出すわけにはいかない。
彼女は、ふと浮かんだ言葉をそのまま口にした。
「……過ぎたる欲は、身を滅ぼす。ただそれだけの理でございます」
その声は澄んでいた。
蒼龍は息を呑んだ。
やはり、この女は只者ではない。
欲にまみれた宮廷の中で、唯一、俗世を超越した視点を持つ者。
「……下がってよい。そして、すまなかった」
皇帝が頭を下げるなど、前代未聞だった。
しかし、誰もそれを咎めなかった。
李花の後ろに、後光が差しているように見えたからだ(実際は、ちょうど窓から夕日が差し込んだだけである)。




