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ー第3節 暴走する権力欲と毛玉の食事。宰相の理性を食い尽くし、露わになる醜悪な本性

第3節 暴走する権力欲と毛玉の食事。宰相の理性を食い尽くし、露わになる醜悪な本性


 王宰相の怒りは常軌を逸していた。

 長年、皇帝を傀儡かいらいとし、国を我が物顔で支配してきたプライドが、たかだか一人の小娘によって傷つけられたのだ。


「拷問具を持ってこい! その綺麗な指を一本ずつへし折ってやる!」


 もはや尋問ではない。ただの私刑だ。

 御簾の奥で、蒼龍が立ち上がる気配がした。これ以上は看過できないと判断したのだろう。

 だが、それより早く、李花が動いた――いや、李花の意思を受けた「守護者」が動いた。


「おつまみ、食べ過ぎないでね。お腹壊すわよ」


 李花が小声で囁く。

 次の瞬間、目に見えない白い影が、王宰相めがけて弾丸のように飛び出した。


『ヒャッハー! いただきまーす!』


 おつまみは王宰相の頭上にしがみついた。

 そして、宰相から吹き出す黒い瘴気――「権力欲」と「自己顕示欲」の塊に食らいついた。

 通常、おつまみは負の感情を食べることで相手を沈静化(賢者タイム化)させる。

 だが今回は、あまりに汚れが酷すぎた。

 そして、王宰相の精神を支えていたのは「理性」ではなく、「狡猾な計算高さ」という名のブレーキだけだった。


 おつまみは、その「計算高さ」という皮を食い破り、奥底にあるドロドロとした欲望の中枢を刺激してしまったのだ。

 あるいは、欲望を抑え込んでいた蓋を食べてしまったと言ってもいい。


 ズズズッ! バクバクバク!

『うまい! この腐りきった魂の味! 最高にジャンキーじゃ!』


 おつまみが暴食するにつれ、王宰相の目つきが変わっていく。

 狡猾な光が消え、代わりに狂気じみた光が宿る。


「……は、はは」


 王宰相が笑い出した。

 尋問の最中に、唐突に。


「何がおかしい!」と官吏が問う。

「おかしい? ああ、おかしいとも。なぜ私が、こんな小娘の相手をせねばならんのだ」


 王宰相は立ち上がり、両手を広げた。


「私は選ばれた人間だ! この国の真の支配者は、あの玉座に座る若造ではない! この私、王徳おうとく様なのだ!」


 会場が凍りついた。

 それは、口にしてはならない言葉。明確な反逆の意思表示。


「私が法だ! 私が秩序だ! 皇帝など飾り物に過ぎん! いずれ廃位して、私が新たな王朝を開くのだ! はーっはっはっは!」


 王宰相は高らかに笑い、自らの野望をペラペラと喋り始めた。

 賄賂の受け取り、政敵の暗殺、そして今回の李花への冤罪工作まで。

 「あの人形? 私の部下に置かせたに決まっているだろう! 馬鹿め!」


 おつまみは、宰相の頭上でゲップをした。

『ふう、理性のタガが外れると、人間というのはこうも饒舌になるものかのう』

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