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不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?  作者: 木山楽斗
番外編

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番外編① 悪評を覆すために

 色々とあって大変だった一学期とは違い、二学期は平和なものだった。

 私は婚約者となったマグナード様とともに、楽しい学園生活を送っている。


 友人であるブライト殿下やミレリア嬢との交流も続いていた。

 二人とはクラスは違うが、昼休みの時間などには顔を合わせている。


 逆にその三人以外との交流は、ほとんどない。

 色々とあった一学期の影響で、私の評判はいいものとは言い難いのだ。

 それはなんとも、悲しい事実である。そして悲しいという感情だけで片づけてはいけないことでもある。


「さて、クラスをまとめる委員長についてですが、立候補者はいませんか?」

「……」


 担任の教師の言葉に、教室は静まり返っていた。

 魔法学園において、クラスを取りまとめる学級委員長という役目は前期と後期で入れ替わることになっている。

 その役目は、結構大きなものだ。貴族がほとんどのクラスをまとめるということは、中々にできることではない。


 クラスメイトもなんというか、様子を見ているような気がする。

 それは当然のことだ。貴族としての地位などもあるため、気軽に立候補なんてことはできないものだろう。それによって反感を買うことは、避けたいのだから。


 委員長としての責任というものも、考えるはずだろう。決して軽いものではないが故に、躊躇いが発生するだろうことは、私にもわかる。

 単純に面倒くさがっている者も、いるのかもしれない。学級委員長というものには先生から色々と雑務が与えれることが多い。そういったことを避けたいものも、きっと少なくはないだろう。


「……はい」

「……イルリア嬢、立候補ですか?」

「はい、そうです」


 そんな中、私は手を挙げてみることにした。

 私は自分にある悪い評判というものを、覆さなければならない。それにあたってまず、委員長という役職にはなっておきたかった。

 委員長になれば、嫌でも目立つ立場となる。その立場となった上で、善行を重ねていけば悪い評判も吹き飛ばせるのではないか。そう思ったのだ。


「他に立候補者がいないなら、イルリア嬢に委員長を担当していただきましょう……他に立候補者はいないようですね?」


 私の立候補に、クラスメイトは驚いているようだった。そうやって唖然としている間に、先生は立候補を締め切っていた。

 これはまた、私に対して悪い評判がつくかもしれない。とはいえ、いつまでも沈黙していても払拭ができなかっただろうから、それは仕方ないことだといえる。

 とにかく今は、評判を吹き飛ばせるように委員長として務めることだけを考えておくとしよう。それは私とマグナード様の未来のために必要なことなのだから。




◇◇◇




「……すんなりと決まって良かったと、考えるべきでしょうかね?」

「そうですね。まあ、皆私が手を挙げたことに唖然としていただけのような気もしますが……」

「そうでしょうかね? 僕から見れば、皆学級の委員長というものになりたくないと考えているように思えました。それも、怠惰な理由でです」


 マグナード様は、小声で少し辛辣なことを口にしていた。

 もちろん、そういった理由で手を挙げなかった者はいるかもしれない。ただそれが全てではないだろう。学園を卒業してからの評価にも繋がることだし、委員長になりたかった者も必ずいるはずだ。


「とはいえ、それに関しては僕も人のことは言えませんね……前期の委員長の時に立候補しようなどとは思いませんでしたから」

「それは私だって同じですよ?」

「イルリア嬢は、当時はそれ所ではなかったのでしょう? 色々と大変な時期だったはずです」

「そうでもありませんよ。あの時はエムリーもまだ活発ではなかったですし……」


 前期の時の私は、特に立候補しようなどとは思わなかった。

 子爵家の令嬢である私が、そのような立場になるのは相応しくないなどと考えていたような気がする。

 それは結局の所、消極的な考え方でしかなかったといえるだろう。あの頃の私は、ひどく後ろ向きだった。今となってはそう思える。


「そもそもマグナード様などは、気軽に立候補できるような立場ではなかったのでしょう? 公爵家の令息であるマグナード様がそういった立場になるということは、なんというか地位で蓋をするような感じで嫌だったとか……」

「……まあ、そういったことが頭に過ったことは確かですが、僕はそこまで殊勝な人間ではありませんよ。ただ怠惰に、学生生活を送りたかっただけです。今は少し違う気持ちもありますが、それはイルリア嬢と交流したからこそです」

「そんなことはないと思いますけれど……」


 マグナード様は、私のことを立ててくれているようだった。

 ただ彼は、貴族としての自覚を持つ立派な公爵家の令息だ。きっと色々なことを考えて、手を挙げないことを選んだに違いない。


「……イルリア嬢は、僕を少し過大評価しているようですね?」

「いえ、別にそういう訳では……」

「……イルリア嬢、少し良いだろうか?」

「え?」


 私がマグナード様と話していると、低い声が聞こえてきた。

 その声の方向を私は向く。するとそこには、クラスメイトの一人が立っていた。彼はガルクス様、グライダン侯爵家の令息で前期の学級委員長である。

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