75『今年初の運営会議』
週が明けて月曜日、西新宿ギルドは今日から本格始動だ。
まずは全員の状況を確認するためにステータス診断からはじめる。
◆奥野勇人
Lv.31→42
筋力:46 耐久:46 魔力:104 敏捷:39 器用:42
スキル
《魔獣創造(★★★★★)》《妖器賜与(★★★★★)》《闇築因子(★★★★★)》《幻界収蔵(★★★★★)》
ダンジョンXがキツかったからか、さすがにかなりレベルアップした。
魔法の“ひらめき”を得られたおかげで、ついに魔力が無用の長物ではなくなった。
ちなみに魔力というのは「魔法の強さ」の数値で、MPのようなものではない。
俺ならば、唯一使えるようになった魔法であり、魔王用究極闇属性魔法
《天蝕む虚無の柱》の威力に関わる数値だ。
そもそもMPがあったとしてもダンジョン内でステータスが見れるわけじゃないので、意味はないんだけどね……。
だから、あと何回くらい魔法が使えるのかというのは、疲労と同じ様に“感覚”で判断するしかない。
ただひとつだけ言えるのは《天蝕む虚無の柱》が一回の冒険で使えるのは1〜2回が限度だろう……なにしろ“究極”だし……。
俺に続いて「魔王軍Aチーム」の残りの3人が順番に診断していった。
◆黒波五郎
Lv.59
筋力:98 耐久:102 魔力:29 敏捷:50 器用:38
スキル《剛力解放(★★★★)》
◆蛇澤真希
Lv.47
筋力:61 耐久:39 魔力:18 敏捷:71 器用:99
スキル《千里眼(★★)》《瞬射連撃(★★★)》
◆今居久留里
Lv.41
筋力:21 耐久:26 魔力:75 敏捷:35 器用:31
スキル《癒昇恩寵(★★★)》
そして「魔王軍Bチーム」の4人も診断した。
五郎の元同僚の寺山正一郎がレベル42で、彼以外も現在レベル20〜25くらいにまで育ってきていた。
診断が終わって自分の机に戻ったAチーム・Bチームの全員。そして鯨山さんとルーシェルの視線が、ひとりだけ立っている俺に集中している。
「じゃあ、これから今後の運営方針を話していこうと思うんだ。とりあえずはAチームが次に潜るダンジョンなんだけど……」
Bチームに関しては正一郎にかなり任せている。それなりにレベルが上がりやすく、それなりに魔石が手に入るダンジョンを彼はよく知っていたのでまだ深くは潜れないBチームのリーダーとしては最適だった。
「西新宿ギルドは武器防具は素晴らしいけど、効果が発生するレアアクセサリーのようなものは全然持っていないからぜひ欲しい……だから富士山と那覇のどっちかにまた行って、新記録を作りつつアイテム回収をしようと思うんだけど……どっちがいいかな?」
高校中退の久留里が、まるで優等生のようにピシっと素早く挙手する。
「絶対に沖縄! だって冬の山梨は寒いもん!」
「ダンジョンの中に入れば気温18度くらいだけどね」
「お〜きなわ! お〜きなわ! お〜きなわ!」
「ああ、なんてうるさいんだ。じゃあ民主的に多数決にしよう。Aチームで那覇ダンジョンに行くのがいいと思う人は手をあげて」
五郎、真希、久留里の3人が手をあげた……みんな寒いのはいやか。決定だな。
そんなわけで俺は鯨山さんとルーシェルと一緒に沖縄ダンジョンに運び込む食料や水の買い出しに出た。
「ふふふふ、ふ〜ん♩ ふふふふ、ふ〜ん♩」
ルーシェルは店内で流れている「呼び込みくん」のメロディーが頭にこびりついてしまったのか、ずっとそのメロディーを鼻歌で歌っていた。
買い物リストの紙を見ながら、棚の上の方にあるものを俺が、下の方にあるものを鯨山さんがカゴに詰めていると鯨山さんが周りを伺うようにヒソヒソ声で話してきた。
「……奥野さん、もしかしてルーシェルさんってどこかの国のお姫様じゃないですか?」
「え……ええっ? なな……なんで鯨山さんはそう思ったの?」
「一緒に暮らしていてなんとなくですけど。振る舞いというか……」
「さすがにお姫様が行方不明になってたら、大騒ぎになってると思うし……それはないと思うけど」
「たしかにそうですよね……う〜ん、でも……」
パンがなければケーキを食べればよろしいのでは? みたいな態度を天然でとってるんじゃないかと心配した俺がルーシェルに確認しようとしたとき……スマホに通話着信があった。
雪奈だった。
(もしもし、雪奈どうした?)
(ねえ勇人くん、レアなアイテムがあるような気がするダンジョンあるんだけど、西新宿ギルドも潜らない? 私は調査したいだけだしアイテムはいらないから)
(たしか雪奈は北海道に行ってたよな? で、そのダンジョンってどこにあんの?)
(…………知床)
(知床? あの北海道の右上にツノみたいに出っ張ってるあの知床?)
────なんで、こんな1月の、よりにもよってそんな寒くて遠いところに。
次回
エピソード76『知床ダンジョン』




