63『モンスターハウス』
俺と雪奈は壁を背にして戦い続けた。
剣を振って目の前にいるモンスターを斬っていく。飛行タイプは雪奈が火球をぶつけて落とした。
しかしいくら雑魚モンスターとはいえ多勢に無勢……このままじゃ俺たちの体力が底をついてしまう。
31階層へ降りる階段は結界で通れない。29階層へ戻る階段はかなり遠くだ。
「勇人くん! 《闇築因子》は? あれで私たち以外の地面を隆起させてモンスターを天井で押し潰しちゃうの!」
「そうだな、やってみるか…………いや、ちょっと待って。とりあえずフロア全体はやめよう」
なんとなく悪い予感がした。
こういうときは、まず「テスト」をしてみるのが慎重で堅実な俺のやり方だ。
「《闇築因子》!」
地面の一部だけを隆起させた。モンスター集団を乗せた立方体が天井に向かって伸びていく。
そのときだ……悪い予感は的中した。
隆起した立方体の側面が赤黒く脈打ち、そこから粘土のように肉塊が押し出される。その生成されたモンスターたちが地面にボタボタと落ちてくる。
やっぱり、そうだったのか。ここのモンスターは地面から作られている。その地面の表面積を増やすのは危険な行為だ。
俺は《闇築因子》で作った立方体をすぐに地面に戻した。
新たにモンスターが生成されたせいで、さらに深刻なピンチ状態になってしまった。
《魔獣創造》でゴーレムを作って踏み潰すか?
しかしあれは体力の消耗が激しすぎる。
現在の疲れた体でうまく作れるかわからないし、できたとしても、もしその後に何かあったとしたらヘトヘトで対処できない。
コウモリタイプのモンスターが雪奈めがけて突っ込んできた。雪奈は火球で対応するが、小さな炎が彼女の手の中でボウッと現れてそのまま消えた。魔法力が切れたんだ!
俺は雪奈の前に飛び出して、コウモリを斬る。
その剣を振って無防備になった瞬間にイノシシに似た魔獣が体当たりをしてきて俺は壁に叩きつけられた。
ぐはっ! 肺から空気が抜けた。
俺にトドメを刺そうとまた突進してきたイノシシを雪奈が斬る。
「勇人くん! 大丈夫!?」
「あ……ああ……助かったよ」
「それはこっちのセリフ。でもかなりマズイかもね」
「くそっ、俺はかなり魔力が上がったし、魔法エネルギーだって満タン状態で残っているのに魔法が使えないのが口惜しい」
すると突然、大きな音がした……連続する、激しい打撃音だ。
遠くでモンスターがまるで爆風に巻き込まれかのように吹っ飛んでいる。
何かが空気を切り裂くようにシュッと飛び、飛行タイプのモンスターが落ちていく。
人の姿が見えた。
その動きは、見慣れた陣形だった。
黒波五郎、蛇澤真希、今居久留里。
そこにいたのは西新宿ギルドの、俺の仲間たち────魔王軍のメンバーだった。




