60『雪奈と共同調査』
そして1週間後、俺と雪奈はオフィスが入っているビルの地下三階にある未公開ダンジョン──ダンジョンXに調査で潜った。
とにかく行けるところまで行ってみるしかない。
迷宮タイプと鍾乳洞タイプが交互に用意されている地下1階層から9階層までを攻略し、地下10階層ではまたトードとのバトルだ。
常に正面を向いてきて溶解液を吐く相変わらずの攻撃で、雪奈はまたチクチクと時間をかけて倒すのだろうかと思っていたら、ひとりでの調査でも倒していた彼女はかなりタイミングのコツを掴んでいた。
溶解液を吐いたあとのトードの口に今回は1発ではなく2発の火の玉を放り込んで喉の奥を焼いていく。
そして、溶解液を吐くまでの間ができたら剣を突っ込んであっさりと倒した。
「さあ、行きましょ」
「すごい。完全に音ゲーというか、リズムゲーのようなテンポだった……」
11階層から19階層まではまた迷宮タイプと鍾乳洞タイプが交互に続き、そしてボスフロアである地下20階層にきた。
ひとりで25階層まで潜った雪奈は、ここのボスモンスターの攻略法を知っているはずだが……。
広く天井が高い洞窟。
まさに怪鳥音というような鳴き声が上から聞こえ、そこを見上げるといた──大きな翼があり、爪で天井に掴まっている飛竜だ。
洞窟にいるんだからケイブ・ワイバーンでいいのかな?
「雪奈はアイツをどうやって倒したんだ?」
「普通にスルーしたけど……あんなに高いところにいる相手じゃどうしようもないもの。戦ったら滑空してくる側は絶対に有利だし」
「スルー!?」
「私の3つのスキルのうちのひとつの《霧中歩行》で気配を消したら気がつかれないで下に降りる階段まで行けたの」
「いや……でも今回は俺が気づかれちゃうと思うけど」
「そうなのよね……どうしよう」
地の利は圧倒的にワイバーン側にある。
ならば場所を“変えて”戦えば。
短い刀身の忍者刀を使う忍者が、天井の低い部屋に長い刀の侍を誘き寄せるように。
だけど移動して空間を変えるんじゃない、物理的に空間を変えるてしまえばいい。
「雪奈、このフロアを隆起させる。転ばないようにしゃがんでいてくれ」
「うん、わかった」
「いくぞ! 《闇築因子》!」
岩盤が軋むような物凄い轟音を響かせ、地下20階層フロアの床全部が俺と雪奈を乗せてせり上がっていく。
そしてその隆起を停止させた。
20階層は天井が低い洞窟になった。
ボスモンスターはもう飛竜ではない、そこにいるのは地面を這うことしかできない竜だ。
ケイブ・ワイバーンが一直線に吐く炎を左右に分かれて避けた俺たちは、一瞬の目配せをしてから、そのまま左右から同時に剣を突き刺した。
超音波のような怪鳥音の叫び声を上げたケイブ・ワイバーンは倒れ、霧になって消えた。
ここまで俺たち2人の息がぴったりと合っていたことに正直ちょっと驚いた。
雪奈は誇らしげで、だけど優しい顔で俺に微笑む。
隆起させた地面を元に戻して俺たちはさらに深く潜る。
雪奈が到達していた25階層を超え、次のボスがいるであろうフロアのひとつ前の29階層に、《闇築因子》で四角い土の家を作った。
この中で野営して、体力をしっかり回復しておく。
──そっか、今夜はここで雪奈とふたりきりか。




