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55『開発者用バックドア』

このオフィスビル地下三階の、普段はトレーニング用に使っている非公開ダンジョンの「ダンジョンX」に俺と雪奈は入った。


迷宮タイプになっている地下1階層の壁に触れながら、雪奈が俺に質問してきた。



「勇人くんは、20年前に世界中に出現したダンジョンって、いったい“誰が作った”って想像してる?」


「誰が……って……」



ダンジョン入口上部やダンジョン内に彫られた文字を読める俺は、このダンジョンが異世界の人間が何らかの目的で作ったのだというのは知っている。

……それを雪奈に言うつもりはないが。



「こんなもんを作れる超自然的存在は神様か、宇宙人か、未来人か……異世界人しかないんじゃないかな」


「私は異世界人だと信じているけど……それでね、このダンジョンXはその誰かさんが“テスト用に作ったダンジョン”だと私は思うの」



製作者のテスト用のダンジョン……それは俺の仮説と一致していた。

この2ヶ月間、彼女はトレーニングを兼ねてこのダンジョンX内部の調査をしていたそうだ。



「25階層まで潜ってみても、バランスが良すぎるという感想は変わらなかった。それで私は思ったことがあるのね……」



次の言葉を発するその直前の彼女の目は、100点満点の答案用紙を持ってきた子供のように輝いていた。



「制作者がこのダンジョンXでテストをしてたのなら、どこかに制作者が使っていた“出入り口”が……つまり“ダンジョンの向こう側”につながる扉が必ずあるんじゃないのかなって!」



……なるほど。

ダンジョンXが「開発用バックドア」や「デバッグルーム」のような存在ならば制作者が出入りしている、あるいは過去に出入りしていたドアがあるはずだと雪奈は言っているわけか。



「ここがテスト用ダンジョンなら魔法のテストだってするでしょ? きっと魔法の“ひらめき”が得られるフロアとかもあると思うよ! 私は異世界への扉を探すから勇人くんはそのフロアを探せばいいと思うの。一緒に調査しようよ!」


「たしかに魔法は覚えたいし、雪奈がいると心強いけど……う〜ん」



最近、雪奈を諦めさせるのは不可能なんじゃないのかなと思いはじめてる。

そもそもなんで雪奈はそんなに異世界に行きたがってるんだ?


彼女の熱意に押されて一緒にダンジョン調査するのを承諾しかけたとき……久留里が階段を降りてきた。



「あれれ、大人同士の密会ですかー? お邪魔しちゃいましたかー? ユッピー。そろそろお店に行くよー!」


「そっか、忘れてた! 今夜は那覇ダンジョン新記録達成の打ち上げがあるんだった!」


「雪奈さんも来てー!」


「え、いいの? 西新宿ギルドのパーティーでしょ?」




──このときはまだ、あんな打ち上げになるなんて思ってもいなかった。

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