54『ランキングさらに上昇』
「巡窟教団」が「魔王様♡ファンクラブ」という頭の悪いギルド名に改名してからもうすぐで2ヶ月。俺たち西新宿ギルドは沖縄県・那覇ダンジョンの40階層でボスモンスターと戦っていた。
このフロアの主は全身に灼熱の炎を纏う巨大な獅子だ。
俺はこのボスを攻略するために1つ上の39階層の地底湖の水を、《闇築因子》で作った水路に通した。
そして階段を流れ落とさせて40階層まで運んだその水を素材に、《魔獣創造》で水龍を錬成した。
「海淵龍・レヴィアタン! 炎の獣に巻き付け!」
ヘビのように長い胴体の水龍は炎獣のまわりを何周も旋回して完全に囲むと、ギュっと締め上げた。
膨大な水が一気に蒸発し、炎獣の視界を奪う。
ここはサウナかと思うような蒸し暑さの中を五郎が駆けた。
真希は矢を連射する。超高温の炎の鎧を失った獣の脚に魔素の弓が次々と当たっていく。
崩れ落ちる獣の背に五郎は飛び乗り、首筋に剣を突き立てた。
「よっしゃあああ! 討ち取ったぞおおお!」
獅子はドスンと倒れ、黒い霧となって消滅した。
「業火のシーサー」と恐れられ、これまでどこのギルドも倒せていなかったボスを俺たちは倒した。
やったぞ、富士山ダンジョン以来の快挙だ。
「鯨山さん、五郎が倒す瞬間は見れましたか?」
「はい、勇人さん! ばっちり念写できると思います!」
「よしっ! じゃあもう少しだけ潜ったら帰ろう」
「ユッピ〜、外に出たらすぐブルーシールでアイス食べるからね〜、暑すぎた〜」
俺は勝利の余韻に浸りながらギルドランキングのことを考えていた。
このボス討伐の成果と、西新宿ギルドの最近2ヶ月間の様々な実績や話題性でランキングの上昇が期待できる。
魔王様♡ファンクラブは教団時代のノウハウをフル活用して魔王&魔王軍グッズを多数製作、販売しはじめた。
これがなかなかに評判で西新宿ギルドにもかなりのロイヤリティが入った。
龍洞様の母の姫里涼子がしれっとファンクラブの管理をしているのは気になるが……彼女は金が儲かるのなら何でもいいんだろう。
ハチマキ男・寺山正一郎が率いるBチームはトレーニングを終えて各地のダンジョンに潜りはじめ、魔石の回収をはじめた。
Bチームの全員には俺がまたハズレ穴に入ってモンスターの死骸から作った装備を渡してある。
もちろん相変わらずの禍々しい魔王軍装備だ。
オフィス内のスタジオで撮影している久留里の動画チャンネルは登録者数が順調に伸びている。彼女は西新宿ギルドの広報担当&マスコットキャラクターのような存在になっていた。
沖縄から戻ってきた俺たちは、さっそくステータス診断をした。
◆奥野勇人
Lv.31
筋力:37 耐久:37 魔力:82 敏捷:32 器用:36
スキル
《魔獣創造(★★★★★)》《妖器賜与(★★★★★)》《闇築因子(★★★★★)》《幻界収蔵(★★★★★)》
◆黒波五郎
Lv.53
筋力:89 耐久:96 魔力:28 敏捷:47 器用:36
スキル《剛力解放(★★★★)》
◆蛇澤真希
Lv.41
筋力:55 耐久:36 魔力:17 敏捷:58 器用:89
スキル《千里眼(★★)》《瞬射連撃(★★★)》。
◆今居久留里
Lv.33
筋力:19 耐久:23 魔力:62 敏捷:30 器用:28
スキル《癒昇恩寵(★★★)》
ああ、はやく魔法を“ひらめき”たい。ただ伸びていくだけの俺の魔法力が無駄すぎる!
ひらめく瞬間は口で説明するのが難しいらしく……たぶんアハ体験とかミュージシャンとがよく言う“降ってきた”みたいな感じなのだろうか?
「ぎゃああああ! 台無しになってるー!」
鯨山さんのとなりにいる久留里がまた騒々しくしている。
業火のシーサーを五郎がカッコよく倒した瞬間の念写画像には久留里が写りこんでいて、背中の黒マントの「IMAI Group」の企業ロゴがバッチリ見えているらしい。
そして沖縄から戻って2週間後、ギルドランキングが更新された。
◆西新宿ギルド
【世界ランキング22位(前回41位)】
【国内ランキング3位(前回9位)】
おおお! ついに国内1位が射程圏内に入ってきたぞ!
Bチームとファンクラブの存在が以外と大きかったのかも。
とはいえ世界2位で国内1位の「神威連合」と国内2位以下のギルドの差は相当あると思うので、まだまだこれからだが。
「勇人くん、ちょっといい? ダンジョンXのことで話があるの」
オフィスのPCでランキングを確認していた俺のところに、三法師雪奈が真面目な顔つきでやってきた。




