53『異世界のお姫様・3』
巡窟教団のダンジョンからオフィスに戻り、五郎をダンジョンXから出した。
五郎は怒ってはいなかった。それどころか閉じ込められていたというのに恍惚の表情を浮かべていて気持ち悪かった……これは龍洞様に洗脳してもらうしかないのかな……。
そして家に帰って寝ると……また例の夢を見た。
異世界でお姫様と会ったときのあの夢の続きだ。
◆◆◆
モンスターに襲われて馬車と従者を失った人間族のお姫様・ルーシェル・ハイナスタリ嬢と俺は荒野を旅し、ついに丘の上から大きな街を見つけた。今日中に辿りつけるだろう。
「あそこなら君を保護してくれる者はいるよ」
「あの街についたら……お別れなんですね……」
「そうだね。俺は徒歩で旅を続け、君は城に馬車で帰る……よく頑張ったねルーシェル」
俺は右手を差し出し、ルーシェルはその手を強く握った──その瞬間、ルーシェルは握手していた手をバっと離し、数歩後退りをしながら両手で口を押さえた。
「そ、そんな、ユウト様……あなた様は別の世界から転生してきて……そして現在は魔族の……王……」
「どうして、それを……?」
「私には触れた人の過去を読む《追憶眼》というスキルがあります。最後にユウト様のことをもっと知りたいと思って……勝手に使ってしまいました」
「過去を読む……そうか、君は全部知ってしまったんだね。現在のこの外見は前世のものを思い出して化けた偽りのものなんだ。真実の姿を見たら君は叫び声をあげるかもしれないな」
「そんなことありません! 私は……ユウト様を……」
ルーシェルは俺のローブの袖をぎゅっと掴み、エメラルド色の目にうっすら涙を浮かべて見つめてきた。
その瞳には、言葉にできない何かが揺れていた。
「また、お会いできますか?」
「お互いの立場的にそれは難しい。だけど君と会えて人間族というのを知ることができ、憎しみあいは終わらせたいという決意は固くなった……この出会いは良いことだったと思う」
「で……ですが…………はい」
ルーシェルはその後は一言もしゃべらなかった。
街にいた兵士にルーシェルを預けて、俺はすぐにその場から消えた。
それから200年間休戦が続いたのだが人間族側からの突然の侵攻で平和な時期は終わり、最終的には大戦争に発展した……ルーシェルがそれを知らずに生涯を終えたのは良かったと思う。
◆◆◆
俺は夢から覚めた。
思い返してみれば人間族の王族とは交渉などで何度か会ったことはあったが、お姫様と交流したのは長い魔王人生であの数日間だけだったのかもしれないな。
第三章・完
次章『第四章 因果のはじまり』
ここまでお読みいただきありがとうございます。
次章では、物語が大きく動き、ひとつめのクライマックスを迎えます。そしてそれは新しい混乱のはじまりにもなります。
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次章もよろしくお願いいたします。




