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52「魔王様♡ファンクラブ」

「俺はこの噴水に彫られてる文字が読める。だから巡窟教団のデタラメはすべてお見通しだ」


「文字が読める? はぁ? 笑わせないでよ!」


「姫里涼子さん……あんたはスキルを持っていた娘を神聖なドラゴンの化身に仕立て上げたんだろ? そしてこの荘厳な雰囲気の噴水はペテンの儀式をするのには格好の場所だった」


「ふん、私は文字が読めるのよ──龍洞に眠る偉大なる神龍、選ばれし戦士にその血と力を分け与え給えん。これが嘘だっていうの? 証拠があるっていうのかしら?」



姫里涼子は鼻で笑った。

そうだろうな、「誰も読めない文字」というのは「言ったもの勝ち」なのだからさ。


そもそも彼女は魔王軍のようなわかりやすい敵対対象を用いて“あなたも仲間になって戦ってください”と勧誘するのに利用しただけで、魔王軍はただの禍々しい装備を手に入れただけのギルドだと思っているのだろう。


だから“魔王のコスプレ”をしているだけの俺が文字を読めるだなんて思ってもいない。



「ここに書かれている文字は──穢れし獣の骸を捧げよ、魔核を注げ、輪廻の門がまた開かれる、だ。つまり死骸と魔石を捧げればモンスターが復活するんだ」



俺はモンスターが霧になって消えない“ハズレ穴”で拾った骨と小さな魔石を噴水に放り込んだ。



「姫里由衣さん、あなたは母親の金儲けのために龍洞様にさせられたんだ、目を覚ました方がいい」


「ありえないです……お母さんは読めるんです! ここは神聖な泉なのですよ。モンスターを復活させる穢れた泉であるはずがありません!」



龍洞様がそう行った直後、噴水の水の色は真紅に変わり、中から巨大なイタチのような魔獣が出てきた。

なるほど、何の骨からわからないで持ってきたけど、これが生きてた頃の姿なのか。



「モンスターが本当に……そ、そんな!」


「龍洞様……それでもこの泉を“神聖”って言えるのかな?」


「っ……!」



俺は龍洞様を守るように立ち、そして牙を剥いて飛びかかってきたモンスターを一刀両断した。

このためにだけ復活させてしまって、すまんな!


文字が読めなかったことがバレた姫里涼子は頬をピクピクと痙攣させ、二人の探窟家(シーカー)は戸惑っている。

三人の方を向いた俺は例の“発声法”を使った。



「命だけは……許して……やる。ここか……ら、去れ……」



姫里涼子と探窟家(シーカー)たちは血相を変えて、我先にと逃げていった。


フロアにはふたりだけが残った。

龍洞様……透き通るほど白い肌の姫里由衣は、両膝を立てて細い両腕で抱えるようにして地面に座っている。



「私……昔から“信じたものに一直線”って、よく言われてました」


「そっか……」


「私のスキルは人の心を操る《潜在響心(ソウルチューナー)》です。これで探洞家(シーカー)さんを教団のために必死に魔石を集める聖巡士にさせていたんです」



つまり聖巡士が与えられた特別な力ってのは能力強化(バフ)のようなものではなかった。

聖巡士が強くなったのは忠誠心を心に刻み込まれて自己を犠牲にした努力をしていただけってことか。



「まあ君は騙されていたんだし、しょうがないよ」



しばらく落ち込んで無言でじっと座っていた姫里由衣だったが、突然元気よく立ち上がった。

ど、どうした急に!?



「……私、決めました! 巡窟教団は解散させます。そして私に真実を教えてくれてしかもカッコよかった魔王様のファンクラブを作って、信徒の皆さんにはありがたく入っていただきます!」


「……はあ? 俺のファンクラブ?」


「うふふ、聖巡士のみんなも《潜在響心(ソウルチューナー)》で再洗脳させちゃえばいいですしね!」



(なんか、この子、ちょっと怖いわ……)



まあ、とりあえずこれで巡窟教団から狙われることもなくなった。

あとは俺がダンジョンの文字が読める事を龍洞様には黙っておいてもらうようお願いをすればいい。雪奈が知ったら面倒だからな……。



────あ。


ダンジョンXに閉じ込めたままの五郎はどうしよう……。

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