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51『龍洞様』

そして3日後。

今日の夜に「神聖なる泉」で龍洞様から探洞家(シーカー)に力を授ける儀式が行われることを知った俺は、ひとりで池袋Bダンジョンへと向かった。


池袋Bダンジョンは小さな工場の敷地内に出現したものだが、現在は巡窟教団がその土地を買い上げてしまったので実質的に教団専用のダンジョンとなっていた。

地下3階までしかない小規模なダンジョンで最下層に青い水の噴水があり、巡窟教団はこの場所を聖地だと信徒に語っている。



20時30分。

ケルベロスのローブを羽織った俺は敷地内に入りダンジョンの巨石(ここのはかなり小さい)の前まで歩いた。入口前で警備をしていた若い男が俺に気が付く。



「今夜は巡窟教団の儀式がある。関係者以外はダンジョンには立ち入り禁止だ……って、お前はまさか……!」


「そうだ……魔王軍の首領。魔王……と呼ばれている男だ」



警備の男のすぐそばに寄った俺は、1000年間の魔王時代に身につけた「絶対に震え上がる恐ろしい声」を出した。

これはスキルでもなんでもない、100年近くの研究とボイトレの末に編み出した特殊な“発声法”だ。



「龍洞……殿と話があるだけ……だ。邪魔をす……れば、我が呪い……で……貴様はむごたらしい……最後を……迎えるであろう」



亡者をいたぶる鬼の唸りのような低く濁った音が腹の底から漏れ、聞いた者の本能に背筋が凍るような恐怖心を起こさせる。



「貴様……を……蝋人形にしてやろうかぁ!!!」


「ひっ! ひぃぃぃぃ!!!」



昔からこれが使えていたら色々と腹立つことも回避できたのにな……まあ、いまさらどうでもいいけど。


警備はまだ儀式を行う前の新人探洞家(シーカー)が任されているというのは調べ済みだった。

儀式後は巡窟教団に強い忠誠を誓うらしいので恐怖を与えても無駄かもしれないが、新人ならばこの声には勝てないと踏んでいた。


青ざめた顔の警備の男は道を開け、俺はダンジョンの中に入っていった。



出現する雑魚モンスターは持ってきた剣で苦労することなく倒せた。

俺のスキルは支配者用に特化しているとはいえ、ステータスがこれまでのボスモンスター討伐等で上昇しているので、中堅探洞家(シーカー)程度の強さはある。


最下層である地下3階への途中で俺は階段を降りる足を止めた……若い女性の声が聞こえる。



「……いまから私が、聖巡士としての真の力をおふたりに与えましょう」


「ありがとうございます、龍洞様!」


「この身を巡窟教団に捧げます!」



階段の影から最下層フロアを覗くと、そこには念写画像で見たのと同じ噴水があり、その前にはダンジョン装備の2人の男と美熟女の姫里涼子……そして銀糸を編んだような白装束をまとう少女がいた。


いや、久留里よりも幼く見えるので少女だと思ったのだが、鯨山さんの例もあるので女性としておこう。

龍洞様と思われる女性が噴水に向かって目を閉じて祈りを捧げている。


俺はフロアに足を入れて噴水に向かって歩く。

四人は俺の姿を見るとギョっとした顔をしていた……驚くのも無理はない、敵と認定した“魔王軍”の首領である魔王が直接やってきたのだから。


しかし姫里涼子はなかなかの胆力の持ち主なのか、すぐに気丈な態度になった。



「……魔王ね、この神聖なる泉に何しにきたの?」


「神聖なる? 笑わせるね。これはただの邪悪なモンスターを骸から甦らせる、おぞましい“装置”だ」



────俺はふところから、モンスターの骨と魔石を取り出した。

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