50『異世界文字が読める女』
俺が巡窟教団の「初洞会」に行っている間に、真希は巡窟教団について詳しく調べておいてくれた。
「魔王軍……私たち西新宿ギルドを敵視する過去の教義は見つからなかったわ。今日からの新しい教えみたいね」
「そっか、じゃあ五郎はまだ知らないわけか……良かった」
初洞会でマイクを握っていたゴージャスな縦ロールの巻き髪美魔女は姫里涼子という名前だった。
姫里涼子の娘である姫里由衣が「龍洞様」と呼ばれる教祖的な存在らしい。
聖なるドラゴンが現世に人の姿で顕現したのが龍洞様なんだそうだ。
探洞家である聖巡士はダンジョンから魔石を持ち帰ることで、スキルを持たない一般信徒は寄付を行うことで巡窟教団に貢献していた。
「姫里涼子と娘の龍洞様が教団を運営している目的が、本当に人々の救済を願っているのか、ただの金儲けなのかはわからないわ」
「どちらにしろ俺たちは危険な状況だな……あっ! いまダンジョンXでトレーニングしてる五郎はどうしよう? 西新宿ギルドが巡窟教団の敵に認定されたのを知ったら色々とややこしいぞ」
俺がそう言うと真希はすぐに立ち上がった。
「1週間分の水と食料をダンジョンXに放り込んで、入口の扉が中からは開かないようにして閉じ込めてくるわ。ダンジョンは素晴らしいって彼は言ってたし、別に平気でしょ」
「お……おう……頼むよ……」
さて、これからどうするか……面倒なのに目を付けられてしまったもんだ。
真希は巡窟教団についてまとめたプリントを置いていったので、それを読んで考えることにした。
詳細は公表されていないが、龍洞様は何らかのスキルを持っているらしい。
そして龍洞様の母である姫里涼子は……え。
洞窟内の……文字が読める?
姫里涼子は異世界の文字が読めるっていうのか?
プリントには2枚の画像が貼られていた。それは記録員による念写画像だった。
1枚目の画像はとあるダンジョンの最下層にある円形の噴水で、その水はラピスラズリのような深く美しい青色をしていた。
龍洞様はこの「神聖なる泉」の前で探洞家に特別な力を授けているそうだ。
2枚目の画像はその噴水の石に彫られている文字のアップだ。
画像には姫里涼子によってその翻訳されたその文字の日本語訳がついていた。
──龍洞に眠る偉大なる神龍、選ばれし戦士にその血と力を分け与え給えん。
「ぷっ……はは……ははははっ!」
なんだよ、“その血と力を”って!
五郎を閉じ込め終えた真希が戻ってきて、大笑いする俺を怪訝な顔で覗き込んできた。
「……なにがそんなにおかしいの?」
「巡窟教団から何かされる前にこっちから会いに行ってくる……俺ひとりでインチキを暴いてやるよ」




