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5『ダンジョンマスター』

三法師雪奈(さんほうしゆきな)は美しき探窟家(シーカー)として知られている。

ほんわかした笑顔の優しげな雰囲気は、その冒険実績とかなりのギャップがある。

過去に何冊も写真集が発売されるほどのアイドル的人気があり、その美貌は33歳となった現在もまったく衰えてはおらず、むしろ大人の魅力が増していた。



「中学の卒業以来だよな。雪奈の活躍は……テレビとかでよく知ってるよ」


「どうして勇人くんがダンジョンに? だってあなたは一緒に診断に行って……」



そう……18年前、俺たちは一緒にステータス診断を受けにいった。

もちろん興味があったのは俺の方で、彼女はついでにという感じだった。

そしてスリースキルだった雪奈はすぐにダンジョン人生を送るようになるが、ノースキルだった俺はダンジョンを諦めて高校に進学をする。



「西新宿ギルド代表の黒波五郎だ。アンタみたいな超有名人にこんなショボいダンジョンで出会うなんて驚きだな。いったい何してたんだ?」


「いつもトレーニングでここを使っているの。だけど今夜は私の《境界感知(ボーダーセンス)》が反応してたからフロアを調査してたとこよ」


「《境界感知(ボーダーセンス)》って、ダンジョン内の異変を察知できるってスキルだっけ?」


「そう……でも異変の正体が掴めない。この文字から特に強い反応が出てるけれど読めないし……悪い予感がするわ、今日は出た方がいいかも」



雪奈が指差した床には異世界の文字が彫られていた。

もちろん俺は普通に読める。



──月が姿を隠す夜、深淵は六面の石を振る。目が出ぬならば、ただの通過。目が出たなら、力無き者より血は流れん。



月が姿を隠す夜……たしか今夜は空に月が見えなくなる新月の日だ。

六面の石ってのはたぶんサイコロのことだな。


つまり今夜、ランダムで何かが起こるってことか?


突然、自分たちがやってきた方向からゴゴゴと地響きのような音が聞こえた。

真希はその方向を見つめる。



「階段の出入り口が……塞がった」


「はぁ!? 塞がっただと?」



そして、また別の方向からも同じ様な地響きが鳴り、真希はその方向を見た。



「地下2階に降りるための階段も塞がってる」


「ええと、真希……じゃあなんだ、俺たちはこのフロアに閉じ込められた?」


「そう……みたい」



もしかしてサイコロの出ちゃいけない目が出ちゃったのか?

次の瞬間、雪奈の表情が険しくなった。



「……下から来るっ! ここから離れてっ!」



俺たちの足元……文字が彫られていた場所に巨大な魔法陣が出現したので、全員そこから逃げた。


青く光る魔法陣から巨大な影がせり上がってくる。


それは全身に金属の鎧を纏ったクモのような外見の……半金属のモンスターだった。

魔鋼蜘蛛とでも呼べばよいのだろうか。

複眼は地獄の炎のように赤く、どっからどう見ても殺意MAXのヤバそうなやつだ。



「雪奈……あのモンスターはどんなヤツなんだ?」


「あんなの見たことない……ここにこんな仕掛けがあったなんて……」



すると魔鋼蜘蛛はガチャガチャと沢山の長い脚を動かして俺に向かってきた。


床に彫られていた異世界の文字──力無き者より血は流れん。


そうか、一番レベルが低い俺から殺そうと……これはかなりマズいかも。



「勇人くんっ!」



俺を突き飛ばした雪奈は、すぐに剣を構える。

しかし魔鋼蜘蛛の脚は彼女の剣を折り、そこまま彼女の心臓も貫いた。



──18年ぶりに再会した三法師雪奈は、俺の目の前であっさりと死んだ。

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