46『ダンジョンX(エックス)』
西新宿ギルドの4人は魔王軍装備に、雪奈は中野Cダンジョンで見たときと同じ白い鎧にオフィスで着替えた。
「私はここでお留守番ですね、みなさん頑張ってきてください!」
鯨山さんは胸あたりの高さで両手をグーにして握り、応援してくれた。
癒される……ああ、そうだ、この癒しの感じがこれまでの西新宿ギルドにはなかったんだよ。
イマイグループの会長という役職はさすがに多忙らしい。
どこかから連絡を受けると電話口の相手に「ちょっと待って」と言い、久留里の手にそっとケースを押し付け、そして指示を出しながら足早に去ってしまった。
高級ブランドのロゴが入ったケースのリボンをほどいて中を開けると、そこには黒いマントが入っていた。
特注の黒マントは久留里の悪魔系ダンジョン服と完璧すぎるほどにマッチしていたが、金の系で「IMAI Group」の企業ロゴが刺繍されている。
「ヤダー! こんなの絶対にヤダー! ダサいー!」
「これで久留里が探窟家を続けるのを認めてくれるんだから、諦めてくれ」
ブー垂れた久留里をひっぱって地下3階駐車場に戻り、5人でダンジョンに入る。
ダンジョンの第1階層は富士山ダンジョンと同じ迷宮タイプで、とくに変わったところはない。
モンスターも出現したが雑魚ばかりで、まだ誰も開けていないアイテムボックスから中身を回収していった。
2階層は鍾乳洞タイプだった……そして3階層はまた迷宮タイプで、4階層は鍾乳洞タイプ……。
スライム系、コウモリ系、虫系、獣系とモンスターのバラエティは豊かで、それらは潜るほどに順当に強くなっていく。
5階層の迷宮タイプに入り、「う〜ん」という顔をしていた五郎と真希に雪奈が寄っていく。
「五郎さん、真希さん、やっぱり、なにか変な感じがする?」
「ああ、そもそも迷宮と鍾乳洞が交互に来るのも妙だしよ、それに出てくるモンスターが……なあ、真希」
「そうね……普通はその階層に出現するモンスターは1種類か2種類なのに、まるで図鑑のように沢山の種類が出てくる。それに強くなっていく感じが順当で……」
「分かるわ真希さん、ちょっと“バランスが良すぎる”のよね」
ダンジョン歴が長い3人がこのダンジョンには違和感があると言っている。
世界中にあるダンジョンは“誰かが作ったもの”だというのを疑うものはいないが、この「ダンジョンX」はあまりにも人為的すぎるらしい。
これは俺の仮説だが、「ダンジョンX」はダンジョンを作る際に「検証用」「テスト用」として使われたものなんじゃないだろうか?
9階層の迷宮が終わり階段をおりて10階層へと向かう。
危険を察知できるスキルを持った雪奈が五郎と先頭を交代した。
「《境界感知》の反応が強くなっていってる……」
そして10階層の床を雪奈が踏む。
彼女は腰に下げていた俺から貰った禍々しい剣を抜いた。
「ここまでの教科書通りすぎる流れから予想していたけど……やっぱり、そうなるのね」
岩壁の地下10階層は──天井が消えたように高く、黒い土の床が広がる、いかにもこれから「ボスモンスターが大暴れするだろう」空間だった。




