45『未公開ダンジョン』
ダンジョンの巨石は卵や釣鐘のような形が多いのだが、このオフィスビルの元地下駐車場にある巨石はそれほど高さはなく平べったい。
オーストラリアのウルル(エアーズロック)の小型版のような印象だ。
久留里の父親……イマイグループの会長は巨石のざらざらとした表面を撫でながら説明を続けた。
「このダンジョンは探索の解放はしていません。20年前に地下駐車場に突如出現してすぐに簡単な調査が行われましたがギルドさんの昼夜を問わない出入りにセキュリティ面の懸念があるとなって、存在を伏せたまま放置されていたんです」
このビルはイマイグループの不動産子会社の持ち物で、会長の一存により西新宿ギルドのみに探索の許可がおりたそうだ。
「ちょっと、パパー! こんなダンジョンがあること、なんで私に教えてくれなかったのー!」
「あはは、すまんすまん。このダンジョンは秘匿事項だったからね」
真希は親指の腹を軽く唇にあてていた。
なにかに気がついたときの彼女の癖だ。
「もしかして、これが……ダンジョンX……」
「んん? そのダンジョンXってなに?」
「発見されたダンジョンはすべて世界ダンジョン機構に登録することが義務付けられているのよ。その登録データの中にダンジョンXっていう仮称だけが公開されていたダンジョンがあったの」
五郎が「俺も噂では聞いたことがあった」と話に入ってくる。
「まさかこんな都庁の目の前の超高層ビルの地下にあるなんてな。こいつぁ、世界でも貴重なほぼ手付かずのダンジョンだぜ」
ダンジョンが出現した場所は(挑戦させることを意図してか)人が集まる場所に集中していた。人がいないサハラ砂漠や絶海の孤島では見つかってはいない。
なので世界中のダンジョンはどこもすでにギルドが足を踏み入れていた。
「お見えになったようですね。実は今日はここにもうひとりお呼びしていましてね」
こちらに向かってくる足音が聞こえた。
振り返ってこの元駐車場の出入口方向を見ると……そこには三法師雪奈の姿があった。
……なんで雪奈が?
「三法師さんには奥野さんと共に久留里のことでお世話になりましたからね。ぜひ三法師さんにもこちらを自由に使っていただきたいと思ってるんです」
「よろしくね、勇人くん」
トレーニングウェアにスニーカーといういつもよりもラフな格好の雪奈は可愛らしく微笑んだ。
雪奈もここを使うのか……久留里の父親はこのダンジョンの権利者と言っても間違いではないし、その人がそう決めたのなら仕方ないけどさ。
「ねぇ、勇人くん。装備一式持ってきちゃってるの、西新宿ギルドと私でこれから合同調査しない?」
「……危険を察知できる雪菜がいた方がいいのは間違いないか。わかったよ、じゃあ西新宿ギルドも準備しよう」
「やったー! 雪奈さんとコラボだー!」




