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40『隠しごと』

翌朝、俺がネクタイをしめていると、奥の部屋から枕を抱えた久留里が目をこすりながら出てきた。



「ふああ……ユッピーおはよぉ、あれー? なんでそんなキッチリした格好してんのー?」


「今日の朝イチと午後に事務所に取材がくるんだよ。久留里が投稿した念写画像がバズってから取材依頼の電話が止まらないんだ」


「わあ! じゃあ私のおかげだ! もし私へ取材申し込みがあったら断らないでよね!」


「断らないかわりに、今日アパートに戻るまでに自分の家に帰ってもらえるか?」


「それは無理。たった1日で帰ったら私の負けみたいになっちゃうもん。できれば1週間、せめて3日は帰りたくない」


「お願いだから帰ってくれ……あっヤバい、取材の時間に遅れる! じゃあ帰ったら話のつづきだ! 近所の目もあるから出歩かないで家でじっとしていてくれ!」



慌ただしくネクタイを整えて、俺はアパートを飛び出した。


そしてなんとか時間に間に合い、ネットニュースの取材を受けた。

ギルド運営について熱く語るIT起業家ばりの“ろくろを回しているようなポーズ”の俺を、カメラマンがカシャカシャと撮っていく。


午前中の取材が終わっていくつかの事務作業のあと、いつもどおり真希の弁当をふたりで食べる。



そうだ、久留里のことを真希に相談してみるか?

いっそのこと真希の家に押し付けてしまうとか……いいかもしれない。



「あ……あのさ……」


「なに? 味、微妙だった?」


「いや、無茶苦茶ウマいです。美味しくなかったことは一度もないです」


「よかった…… 最近ね、勇人に美味しく食べてもらえるのが少し嬉しくなってるかも。前は自分の分だけ用意していて、誰かのために作るってどういう気持ちか知らなかったから」



や……やめてくれ……なんなんだよ、その普段はロボットみたいな女の子がはじめて見せた「人間の感情」みたいなやつは!

久留里が俺んちに暮らしてるって言えない、この空気の中では言いたくない。

おかしなことを想像されたくないから、真希には黙っていよう。



慣れないことをするとかなり疲れる。

午後の取材が終わって疲労困憊の帰り道、アパート二階角部屋の俺の家の前に女性が立っているのが見えた。


あの髪型……あれは雪奈か? なんで雪奈が俺のアパートに?


ドアが開いて久留里が出てきた。

驚いた雪奈が固まっている。


久留里はあきらかに男物とわかるデザインのデカいTシャツをワンピースのようにして着ていた。

あれ、俺のTシャツじゃないか……しかも下はズボンもスカートも履いてない。

ノーパンではないと思うけど、なんて格好してんだよ。


俺の姿を見つけた久留里が腕を伸ばして元気に手を降ってくる。

首を横に振った雪奈と目が合った。



その雪奈の顔は──完全に怒りと軽蔑が入り混じっていた。

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