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39『17歳と33歳』

部屋の電気はついている。

居留守をしようものなら、叫びながらドアをドンドンと叩いてお隣さんが出てくるのは間違いないので、久留里を家の中に入れた。



「へえ、ユッピーの部屋ってこんな感じなんだ! なんか……何にもないね!」


「ただ寝に帰るだけの家だからな……しかし家出って……なんで俺の家に来たんだよ?」


「だってアイドルとかってデビュー前に所属先の社長さんの家に住み込みとかするって聞くしー」


「昭和のアイドルだよ、それは! うちは芸能事務所じゃないし! っていうかモデル事務所入ってるんだろ? そっち行けよ」


「う〜ん、あっちの社長さん顔がやらしいし、ちょっと怖いし。ユッピーの方が安全で必死にお願いすればOKしてくれそうなんだもん」



俺も随分と舐められたものだ……信頼されているとも言えるが……。

久留里はボストンバッグを床に置くと、中から服を取り出した。



「暑くて汗だらけー! シャワー使わせてねー! タオルも借りるよー!」



着替え場所であるバスルーム前の洗面所にはドアがないので、俺は2DKのこのアパートの奥の部屋にひっこんだ。


シャワーで頭を冷やして冷静になったら帰ってくれるかな?

俺は久留里をそんな目で見ることはないが、世間的には33歳と17歳が一緒の部屋にいるのは許されないのだよ。


シャワーを終えた久留里はパジャマのような部屋着に着替えていて完全にお泊まり態勢だった。



「あのさ……わかってるのか? 保護者の許可なく泊まると下手すると俺は逮捕されるんだぞ」


「うちの親は通報とかしないから平気だよ。世間体すっごく気にするお仕事の人たちだし」


「世間体か……それでよく高校中退を認めさせたな……」



久留里は実家の電話番号を教えようとはしなかった。そして追い出すならネットで泊めてくれる人を探すけどいいの? とか脅してくる。

説得を諦めた俺は今夜は泊めることにした……明日帰ってもらおう。


俺はサンダル履きでコンビニで弁当とお茶を買い、部屋のローテーブルで向かい合って食べた。



「ユッピーっていつもこんな感じのご飯なの?」


「そうだけど……あっ! でも最近昼は真希の弁当食べていてかなり食生活は改善してるぞ」


「あの愛妻弁当! 真希ちゃんが料理得意って意外だよねー」


「……愛妻じゃない。まあ真希は色々と不思議な女性だけど、久留里のことだって俺はよくわかってないんだぜ。なんで有名人になりたいんだ?」



久留里はついていたテレビを消すと「う〜ん」と言ってごろんと仰向けになった。



「子供のころからの夢なだけだよ。芸能人とかユーチューバーみたいな有名人ってケーキ屋さんお花屋さんとかと同じ定番の“なりたいもの”でしょー? 私にはスキルがあったからそれで目立って夢を叶えようとしてるだけ」


「子供のころからの夢を叶える……か」



そのあとはくだらない馬鹿話をしたりオススメの動画を見せ合っているうちに、あっという間に夜はふけ、「ねないこ だれだ」の時間帯になった。


久留里には奥の部屋のベッドで寝てもらい、俺はソファーで寝ることにした。

消灯してしばらくしたら、久留里の寝息が小さく聞こえてきた。



彼女はスキルがあったから子供のころからの夢を叶えようとしている……それは魔王のスキルがあったから20年前の夢を叶えようとしている俺と何も変わらない。


目指すものは違うが、俺と久留里は似たもの同士なのかもしれないな。



──それと俺のアパートにいさせたままにするのは話が別だから、出て行ってはもらうけどな!

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