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4『中野Cダンジョン』

「俺は黒波五郎(くろなみごろう)で、そいつは蛇澤真希(へびさわまき)だ。五郎と真希でいい……敬語もなしだ。そういうのは緊急時の時間ロスになるからな」



スキルのテストのために向かった中野Cダンジョンは、小規模な神社の境内にあった。


参拝者用の駐車場にワンボックスカーを停めて、俺は背広を脱いでギルドから借りた魔導師っぽい黒のローブを羽織った。

なんとなく魔王っぽいし、着慣れた感覚があって悪くない。


五郎は歴戦の古参兵のような傷だらけの真鍮の鎧を身につけ、幅広の両手剣を背中に斜めに装着した。鞘は剣をスライドさせて収納できる仕組みになっている。

おそらく彼は戦士的なスキルを持っているのだろう。


跳ね上げられたバックドアの下で着替えている真希と目が会い、俺は固まってしまった。

いくら夜中とはいえ下着姿で平然と着替えをしていたからだ。



「……なに?」


「いや……その……何でもない」



探窟家(シーカー)の女性ってこういう感じなのか? いや、この子がちょっと変わってるだけだと思うが……。


真希はどうやら弓使いらしい。

動きやすそうな深緑色の布の服に装飾が施された胸当てをつけ、大きなロングボウを革のグローブで握り、背中には矢が入った筒を背負っている。


武器や防具はダンジョン内に落ちていたりアイテムボックスに入っていたものだ。

それらはダンジョンの外では、ただの麻布の服だったり、鉄の剣だったり、銅の盾だったりするのだが、ダンジョン内では切れ味が増したり肉体へのダメージを軽減したりする不思議な力を宿している。



ダンジョンの外観は巨石で、巨石の大きさがダンジョンの広さと比例している。

日本最大で体育館を縦にしたくらいの大きさの巨石なので、キッチンカーくらいのサイズのここは小規模なダンジョンだというのがわかる。


ダンジョン入口の分厚い鉄の扉についたセンサーに五郎がカードをかざすとガチャっと開錠する音が鳴った。

扉を開けるとふわっと生ぬるい風が外に吹き出し、下へと続く階段を五郎を先頭に降りていった。


神社境内の地下にダンジョンができているわけではない。

ダンジョン入口から、レベルやスキルや魔法の概念が存在する……いわゆる“ゲーム的な世界”につながっている。

もうここからは外とは違う物理のルールが働いているんだ。



階段が終わり、地下一階のフロアについた。

迷宮というよりはだだっ広い空間となっていて、天井はかなりの高さだった。



「……さてと、名前は勇人だっけ? この中野Cダンジョンは目ぼしいアイテムが取り尽くされていて人がこねえし一階層がこんな感じで障害物もねぇから、あんたのスキルをテストするにはもってこいだ」


「なにか感じる? 私ははじめてダンジョンに入ったとき「遠くのものが見える気がする」と、自分の《千里眼(クレアボヤンス)》のスキルにすぐに気がついた」



そう言うと真希は少し目を細めてフロアの奥の方を眺める。

すると、眉を歪め、若干困惑したような表情になった。



「ずっと向こうに…………人がいる。パーティーではない……ひとりだけ」


「誰だ? 気になるな、じゃあ勇人のスキルは後回しにして行ってみるか」



俺たちは真希が指差した方向へと歩いた。

しばらくまっすぐ進むと、人間のうしろ姿が見えてきた。


そこにいたのは純白の鎧を身につけたセミロングヘアーの女性だった。

女性の腰から下は短いスパッツになっていて、露出した太ももはよく鍛えられているように見える。


女性は振り返った。


その女性の顔は……俺の知っている顔だった。



「……ゆ……雪奈?」


「えっ?」



彼女はダンジョンマスターと呼ばれるスリースキル持ちのレジェンド探窟家(シーカー)で、そして18年ぶりに会う俺の中学時代の同級生──



「あなた……もしかして、勇人くん!?」



引き篭もりだった俺にプリントを届けるために、毎日のように家に来ていた


────三法師雪奈さんほうしゆきなだった。

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