34『地下30階層の戦い』
そして30階層のボスモンスター・石の竜巻の討伐プランを全員に伝えた。
「これより作戦名【オペレーション・リバースボルテックス・ゼロ】を決行する!」
全員からちょっと痛いとか長いとかシュタゲかよ!とか突っ込まれたが、こういうのは熱くいきたい。
真希は首から魔石のペンダントを外して、俺の手に乗せる。
「じゃあこれ……なくさないでね。250万円だもの」
「ああ、250万円だもんな」
「よっしゃあ、いくぞ! 思いっきり殴られてくるぜ! 社長はしっかりついてこいよ!」
土の建物から五郎が飛び出し、ローブのフードをかぶった俺はそのうしろにつく。
五郎は石が飛んでくる方向に両手剣を向けて頭を守ったが体には当たり放題だ。
俺の体にも石が当たる。
ケルベロスの硬い毛でできたローブとはいえ、痛い……むちゃくちゃ痛い!
「うりゃあああーーーー!!!」
俺は買取価格250万円の魔石をできる限りの力で遠くに投げた。
「《魔獣創造》!!!」
俺が投げた魔石がまっすぐ上に飛んでいく。
その場にある素材から自分の命令で動くモンスターを生み出せる魔王専用スキルの《魔獣創造》でどんなモンスターを作るかには「想像力」が必要だ。
ただし今回駆使したのは「想像力」というよりは「模倣力」だった。
空中で静止した250万円の魔石は地面の石を浮かし、太陽を中心に軌道を描く惑星のように回らせ、石の竜巻をつくりだした。
当然、ボスモンスターとは逆回転の竜巻だ。
《魔獣創造》発動中は俺が指揮しないといけない。
なのでここを離れるわけにはいかず石の攻撃に晒され続けた。
「ぐああっ、しゃ、社長よ! しっかりと俺のデカイ体を盾にしろよな!」
「あと少し……あと少しだ……」
ときどき隙を見て、建物から久留里が飛び出し五郎と俺に回復魔法をかける。
鯨山さんも顔を出してはこの光景を目に焼き付けていた。
このフロアの主である石の竜巻と、俺が作った石の竜巻がぶつかる。
石と石が激しく衝突して弾けていく。
時計回りの竜巻と反時計回りの竜巻はついに重なり……。
そして──
すべての石は、地面に落ちた。
まるで台風が去ったあとのような静けさに地下30階は包まれた。
しかし、ボスモンスターの魔石はまだ高い場所に浮かんだままだ。
地面に落ちた石がゆっくりと浮かびはじめて、石の竜巻を再生しようとしていた。
俺はしばらくは竜巻は作れない。
《魔獣創造》は体力と精神力の消耗が激しすぎるんだ。
中野Cダンジョンでゴーレムを作った後もそうだったが、デカいサイズのを作ったら休む必要がある。
そしてここで【オペレーション・リバースボルテックス・ゼロ】の最終フェーズに移行する!
「真希! 今なら魔石は無防備だ! 奴がまた復活する前に射落としてくれ!」
真希が建物から出てきた。
彼女は空に浮かぶ魔石に向けて弓を構えた。
玉虫色の光が一点に凝縮して魔素の矢が出現するが、すぐには射たない。
空気中の魔素がオーロラのような姿で矢に力を溜めていく。
真希の指先が震えていた……それでも彼女は俺を見て、笑った。
指を離し。
矢を放つ。
一直線に飛んでいった矢は
魔石に命中した。
パリンと硬質な音を響かせて
────砕け散った。
浮かびかけていた石がパチパチパチと落ちて、硬い雨が降り注ぐ。
それはまるで、我々を讃える拍手のように聞こえた。
……勝った。
勝ったんだ。
俺たちは歴史を塗り替えたんだ。
これまでどんな大手ギルドも倒せなかった富士山ダンジョン地下30階層のボスを、俺たち零細の西新宿ギルドが倒したぞ!
「やったぞーーーーー!!」
全員はとびっきりの笑顔で何度もハグしあい、歓喜の声をあげた。




