33『石の竜巻』
痛々しいハチマキ男たちの姿に、さすがに俺たちは言葉を失った。
しかし、諦めて帰ろうと言う者はひとりもいなかった。
それは同調圧力などではもちろんない。
お互いが顔を見合わせて無言で頷きあう。
そこにあったのは、ここまで来て何もしないでは帰れないという気持ちだった。
階段を降り……地下30階層に来た。
10階層、20階層とよく似ている天井が高い岩肌の空間だ。
モンスターの姿はどこにも見えない。
俺たちは五郎を先頭にして、他の3人で鯨山さんを守るようにしてフロアを進んだ。
その時……石が飛んできた。
それは数個ではない、数百数千の石が上からではなく横からやってくる。
体に、腕に、脚に、ほとんどが小石とはいえ、あまりにも多すぎる。
「俺が建物を作るから逃げ込むんだ!」
《闇築因子》で地中から窓のない四角い家を出して、そこに全員が入った。
土の壁に石が当たる鈍い音が響く中、傷や痛みを久留里の回復魔法で治療した。
「はぁはぁ……五郎の……言ってた通りだった」
「だろ? 敵の姿は見えねぇし、何にもできねぇんだよ」
「石は上からじゃなくて、なぜか横から来ていた……凄まじすぎて逃げるので精一杯だったけど」
どうする?
あの石はボスモンスターがどこかから吐いているのか?
いや……しかし、そういう感じでもないような気がする。
「あ……あのう……」
「鯨山さん、どうかしましたか?」
「私……逃げるときに一瞬ですけど振り返って目に焼き付けて……こんな感じの念写ができました」
「念写?」
鯨山さんはこの建造物に逃げ込んでから念写した紙を渡してきた。
全員でそれを覗き込むと……そこに写っていたのは“石の竜巻”だった。
よく衝撃のビデオのような感じで竜巻の映像があるが、あれと似ていた。
石は横から飛んできているというよりは、渦を巻いて飛んでいたんだ。
だけど石を飛ばすほどの竜巻の風圧なんて感じなかった……どうなってんだ?
鯨山さんの念写をもう一度よく見た。
竜巻の上の方に……紫色に光る小さな点が見える。
そうか、そういうことか!
「ありがとう鯨山さんのおかげだ!」
「え?」
「わかったぞ、ボスモンスターの正体は魔石だ!」
「魔石だと? どういうことだ?」
「五郎は18階層で泥スライムと戦った。あの泥スライムは魔石の命令で動く準生命体だったけど、石の竜巻も魔石が動かしている準生命体なんだ。おそらくは泥スライムのよりもずっと大きい魔石で、そこから生み出されているエネルギーフィールドで無数の石を浮かばせて高速回転させている」
真希は自分の胸元で光る魔石のペンダントに触れる。
「……あの石の竜巻がボスモンスターの体ってことなのね」
「ああ、そういうことだ」
魔石は、石の竜巻の体を持つモンスターになれるということがわかった。
だったら俺もそのモンスターを“作って”しまえばいいんじゃないのか?
ただし……逆回転でだ。
回転ベクトルに逆回転の回転ベクトルを衝突させると、それは干渉し……力は相殺される。
「あの竜巻に逆回転する竜巻をぶつけて打ち消すぞ! それには全員の協力が必要だ! これから俺の計画を話す!」




