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3『西新宿ギルド』

翌日、仕事を終えた俺が向かったのは、自分の会社から通りを挟んだ雑居ビルの5階だ。

そこにある「西新宿ギルド」の窓には「無料ステータス診断」と書かれた紙が貼られていて、自分のデスクからいつもそれが目に入っていた。


俺は西新宿ギルドのドアをゆっくりと開けた。

中は予想よりも狭く、薄暗い倉庫のような空間だった。

スチールラックやロッカーが置かれ、奥の方にはパソコンに向かっている女性の姿があった。



「あのう……無料ステータス診断お願いしたいんですが……」



女性は振り返り、自分のとなりのパイプ椅子を指差した。



「では……こちらへどうぞ」



名前と生年月日をPCに入力してから頭にヘッドギア型の装置をかぶせられ、小さな箱のような機械に左手の人差し指を挿れさせられる。


これだけでいいのか……18年前はまるでCTスキャンのような大袈裟な機械に入って診断をしたのだが、かなり進歩してるんだな。


隣に座る女性はスラっと背が高く、20歳前後くらいに見える。

整った横顔でまつ毛の長いアンニュイな雰囲気の美女は、艶のある長い黒髪を指先でなぞるようにして耳の後ろへとかけた。



「すこしチクっとするから」



左手の人差し指に細い針が刺されたのを感じた。

その10数秒後、画面を見つめている彼女は困惑の表情を見せた。



「来客かと思ったら、おっさんサラリーマンの診断かよ……」



やけに声が大きい黒タンクトップの筋肉中年男が、西新宿ギルドに入ってきた。

俺よりも年上のくせにおっさん呼ばわりしてきたその男はモニターを見ると、目を見開いて絶句した。

俺は首を伸ばしてモニターを覗き込み、表示されている文字を見た。


名前:オクノユウト

性別:男性

年齢:33歳

Lv.1


筋力:8

耐久:7

魔力:12

敏症:7

器用:8


所持スキル数:4

《未確定》★★★★★(SS級)

《未確定》★★★★★(SS級)

《未確定》★★★★★(SS級)

《未確定》★★★★★(SS級)



「な……なんだ、こりぁ!? スキルが4つ? そんで未確定って……どういうわけだ!?」


「これまでの探窟家(シーカー)の誰も持っていないからデータにはないスキルってことみたい。しかもレアリティは最上級ってなってる……4つ全部が……」



20年前、世界中に出現したダンジョンの大規模調査が行われ、ダンジョンから持ち帰った青白く光る特殊な石(さっき俺がかぶったヘッドギアにその石は組み込まれているのだろう)を使えばステータスが調べられることが判明した。


そして18年前にダンジョンが民間に“開放”され、スキル保持者からのフィードバックにより徐々にデータベースが完成していった。


俺のレベルが1なのは、この肉体は一度もダンジョンを経験していないからだ。

しかしスキルは“魂に刻まれる”ものだから、魔王だったときに得たスキルは消えなかったらしい。



やったぞ……15歳のときの夢を叶えられそうだ。



「フォースキルなんて聞いたことがねぇ! こんなバケモンが33歳まで普通に生活してたってのか!?」 


「登山やボクシングの素晴らしい才能があっても、危険だからと挑戦しないで自分の才能には気が付かないままの人だっているでしょ? ダンジョンはさらに危険なのだから……こういうケースもないとは言えない」


「そりゃそうだが……計測器の故障かデータベースがバグってる可能性はないのか?」


「診断が間違ってるかどうかは……」



女性は立ち上がり、感情の起伏が少ないミステリアスな瞳で俺を見つめる。



「ねえ、これから実際に(もぐ)ってみない?」

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