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28『五郎の元同僚』

地下10階層はここまでの石造りの迷宮とは違っていて、天井の高い広いホール状の洞窟だった。

五郎の話では5の倍数階はモンスターがでないというよりも、過去にボスモンスターがいたがそれが討伐されて“主が不在になったフロア”ということらしい。


言われてみれば、ボスモンスターが自由に大暴れできそうな雰囲気だ。


俺たちを見た他ギルドの探窟家(シーカー)たちは顔をこわばらせ、場の空気はピンと張り詰めている。



まず先鋒は邪悪なオーラを纏う漆黒の鎧と両手剣で武装した髭の大男の五郎。

その後ろには肩にグロテスクな装飾の弓をかけた無慈悲で冷酷な瞳の真希。

ちょろちょろ動き回る「魔王様あいつ殺しちゃお♩」とか笑って言いそうな小悪魔系の久留里。

そして最後尾(しんがり)を務める、地獄の番犬・ケルベロスの恐ろしいローブを羽織った俺。


こんなのがゾロゾロと階段口から出てきたら、ギョっとするのも仕方がない。


ここで休憩をしている探窟家(シーカー)たちは我々よりも先にダンジョンに入っていたので、この“魔王軍”の姿をした四人組を見るのはこれがはじめてだった。



ヒソヒソ声が聞こえる中を、“魔王軍”の俺たちと、そこに紛れた“中学生の社会科見学”のような鯨山桃さんは進み、空いていたスペースを今夜の野営場所にすることにした。



幻界収蔵(アストラルホールド)》に入れておいた水や食材や調理器具を出すと、真希が手際よく調理をはじめていく。

ローブを脱いだ俺はそのすぐ近くで火を起こしていた。



「だけどさ、一酸化炭素中毒とか大丈夫なのかな?」


「ダンジョン内は空気孔がないのに風を感じるでしょ? 仕組みはわかってないけど問題になったことは一度もないわ」



献立は「鶏ごぼう飯」「豚汁」「鮭ときのこのホイル焼き」「梨×水菜×くるみのサラダ」らしい……楽しみだ。


こんな場所でこれほど本格的に料理をするやつらなんていなかったのだろう。

他のギルドの連中が俺たちの様子を驚いた顔で見ていた。


地面に座って砥石で剣の刃を研いでいる五郎に30歳前後の頭にハチマキを巻いた男が話しかけてきた……どことなく雰囲気が五郎と似ている男だった。



「もしかして黒波五郎さんじゃないっスか?」


「……ん? おおっ! ひさしぶりだな!」


「ご無沙汰してます! まとめサイトで画像見たときにちょっと似てるかなとは思ってたんですけど……まさか五郎さんがあの噂の“魔王軍”だったとは驚きました」



もうまとめサイトに……もしかしたらミーム化もありえるな……。

どうやら彼は大手ギルド時代の仲間のようだ。



「そんで、そっちは景気はどうなんだ?」


「どこも浅い層階の魔石が取り尽くされてるんで厳しいですね。深い階層潜るにも人手不足で……五郎さんが戻ってきてくれたらかなり助かるんですが……」


「俺はいまけっこう楽しいんだよ。そこの“魔王様”のおかげでよ」



五郎は俺を見て、ニヤリと口角をあげた。

俺が代表になってからの運営を彼はどう思っているのだろうと気にしていたので少しホッとした。


俺たちはここで食事と睡眠をとってさらに下の階層を目指す。

五郎は強い敵と戦って更に強くなるために、真希は大きな魔石を手に入れるために、久留里はバズる念写を撮るために。



そして俺は──いつか西新宿ギルドが世界3大ギルドと肩を並べられるようになるために、ここでひとつ結果を出したかった。

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