25『中央広場』
西新宿ギルドの社用車は4人のメンバーとダンジョンに持ち込む物資を乗せて、中央自動車道を西へと進んだ。河口湖ICで高速道路を降りて名物の吉田うどんを食べ、富士山ダンジョンがある元牧場に着いたのは午後1時頃だった。
「実際に見ると……これはすごい迫力だな……」
車から降りた俺は目の前にある巨石をしばらくの間呆然と眺めた。
富士山ダンジョンは一般的な体育館を九十度回転させたくらいのサイズだと言われている。
12階建ての中規模マンションほどの一枚岩が富士山をバックにドン! と牧場に置かれている光景は圧巻の一言だった。
「ギルドの方ですか?」
俺と同世代の30代中盤くらいだろうか、『FUJI D STAFF』のロゴが入ったTシャツ姿の男性が声をかけてきた。
「そうです、西新宿ギルドです」
「あ〜はい、ご予約いただいておりますね。ではあそこのテント……7番更衣室でお着替えの後にダンジョン入口にお越しください」
男性が指差した方向にはボックス形の着替え用テントがいくつも置かれていた。それらのテントから鎧やローブを着た者たちが続々と出てくる。
社用車を停めた駐車場からダンジョン入口がある巨石までは50メートルほどの距離があり、そこには中古武器店や飲食店のテントが並んでいた。
武装した格好の人間が店を訪れていて、さながらオンラインRPGの中央広場のようになっている。
五郎が社用車からでかいキャリーカートをゴロゴロと引っ張ってきた。
「凄えだろ。あそこにいるのはアメリカのギルドで、あっちは台湾かな? 日本国内だけじゃなくて世界各国のギルドがここに挑んでるんだよ」
「こんな大人数が同時にダンジョンに入ってるのか……」
我々は着替え用テントでひとりづつ着替えた。
あれ? 真希の格好が……銀の胸当てはそのままだが、その下の緑だった服が黒になっている。
「それどうしたんだ?」
「ネットのダンジョン装備オークションで落札したの。みんな黒っぽいのに私だけそうじゃなかったから……」
真希は少し恥ずかしそうな顔でそう言った。
彼女はそういうのは気にしないタイプかと思っていたから意外だ。
全員が着替え終わってダンジョンへと向かうと、他のギルド連中の視線が一斉に集中した。
「あれってさ……もしかして話題になってた“魔王軍”か?」
「だよな。なんだよアレ……おっかなすぎるだろ」
「狼の顔が3つ付いたローブ、あれがケルベロスのローブってやつか。どう見ても悪の大ボスだよな……」
そりゃあ目立つし、不気味だよな。
道の真ん中にいた連中も避けるようにして左右に別れていく。
「ああ、そうだ久留里。ここにいるんだろ、5人目の臨時メンバーがさ」
「そだよー。ダンジョンの達成結果を残してくれる“記録員”を雇わないとね! あっ! あそこにいる!」




