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24『運営方針・3』

まだまだ暑い日が続く九月の第1週。事務所内の空気は凍りついた。

全員のポカンとした顔を気にすることもなく、久留里は俺の向かいの椅子に座る。



「ええと、まさかだけど……ギルドに専念するために?」



俺が困惑していると久留里は少し上半身を前傾させて顔を俺に近づけ、ニカっと歯を見せて笑った。



「そだよー! けっこう悩んだけど、このバズりのタイミングを逃したくないって思ったのー!」


「やっぱそうなのか……俺が作った装備が悪魔っぽくてネットで注目されてしまったせいで、こんなことになるとは……責任を感じる……」


「なんで責任感じるのー? ユッピーのおかげでチャンス貰えたんだよー?」   


「まぁ、やめちまったモンは仕方がねぇ。思い切りの良さが探窟家(シーカー)らしくていいじゃねぇか」



動機はともあれ久留里は目一杯ダンジョンに挑戦したいわけだな。

こうなったら彼女の「有名になりたい」って夢もなんとか叶えてあげないとな。



「じゃあ、とりあずは現状の確認だ。クズ魔石の売却でさしあたって金の心配はない。装備もかなり良くなって格上のモンスターとも戦える。久留里が学校をやめたことで長期遠征も可能になった」



全員は納得したように頷いた。

俺には前から気になっていたダンジョンがあり、そこに挑める状態にはなっている。



「だから次は、山梨県側の富士山ダンジョンに挑戦したい」


「富士山ダンジョン……たしか山梨側は迷宮タイプで、静岡側は鍾乳洞タイプだったわね」



富士山の裾野の山梨側と静岡側に1個づつダンジョンがあって、どっちも「富士山ダンジョン」を名乗っているから紛らわしい。どっちの県も「うちにあるのが富士山ダンジョンだ!」と言って譲らないのだ。


大手ギルド所属時代に何度か潜ったことがあるという五郎は、あご鬚を触りながら富士山ダンジョンの説明をした。



「山梨側の富士山ダンジョンは挑むギルドが多いから他の連中も同時に潜ってる。特徴といえば超級レベルの広さだな、長い冒険になるぞ」


「ダンジョンに持ち込むものを準備しよう。前回の外苑前ダンジョンのときに、これがあったら良かったと思ったものがあれば教えてくれ」


「野営で米を炊きてぇな、やっぱり米は欲しい。あとは耳栓だな……」


「長いロープがあれば楽だった場面が何回かあったわね」


「ええと、トランプとかぁ……ボードゲームとかぁ……」



全員の要望をリストアップしていった。

備えあれば憂いなし。せっかく俺たちにしかない《幻界収蔵(アストラルホールド)》があるんだから、しっかり活用しないとな。



「3日後に富士山ダンジョンに潜る。もし体調がすぐれない者がいたら延期だ。無理はしないで4人全員が無事に帰ることを最優先にしよう」


「ユッピー、4人じゃなくて5人だよ?」



久留里が手を開いて5本の指を立てて言った────5人? なんでひとり増えた?

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